私たちは嘘をつきました【紫】 (ページ15)

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帰ってきて何の気なしにつけたテレビ。

知らない物語が画面の中で進んでいて、
こんなのあったっけ？…あー最近新しいドラマが始まる時期か～今回の何があるかあんまり知らないな～

喉が渇いたので冷蔵庫から水を取って、ソファに座りそのまま鞄の中に入れていた携帯を取り出そうとした時に

『ねえ、誰が、殺したの？』

澄んだ声が響いた。

ふと視線を上げた先の画面の中にいるのは、紛れもなく
俺が一年前ぶつかって、コーヒーをこぼしてしまった人。

変わってない

変わってないどころか垢抜けて、１年前より磨きがかかっているようで。

どうやらベタな恋愛じゃないらしいこのドラマで、

多分主人公ではないだろう彼女は人一倍輝いていた。輝いて見えた。

その輝きに瞬きするのも忘れるくらい。

俺の携帯にメンバーからメッセージがきてるのも気づかないくらいに。

AA

生年月日 1996年3月30日 O型
デビュー作は2020年の1月のドラマ「＿＿＿＿＿」
身長 162cm
事務所＿＿＿＿＿＿
職業女優

そこから、名前を知って調べたけれど、本当に簡単な情報しか載ってないし
憶測ばっかりが飛び交っている気がする。学生時代はこうだったとか、こういう生活をしていたとかはあんまり見ないようにしている。こういうのってほとんど作り話みたいなこともあるし。

それにしても情報が少ないな～～まあデビューしたてっていうのをあるだろうけれど。

他のメンバーとかに聞いたら絶対すぐ何かバレそうだし。

でも

あの子、手に入れたいな。

そんなことを考えながらも良い案は思いつかないまま、日は過ぎていった。

そしてついに

「え！こーじドラマ決まったの？！」

「そうなんよ！ついに！いや時が来たと言ってもええかな！」

「クッソ～こーじに先に抜かされた～ドラマ班のリーダーとして不甲斐ない！」

「まぁ言うてさっくん声優とかじゃんじゃんオファーきてるやん」

控室で佐久間と康二が話しているのを端々で聞きながら着替えていた時に

「何と今を時めくあのAさんがおるんよ！大ヒット間違いなしや」

「え、あのデビュー間もなくひっぱりだこの人じゃない？」

「お、さすが阿部ちゃんよく知ってるやん～」

「いやいやさすがにあの勢いは知らない人はいないよ」

そう、時が少し過ぎる間にとても知らない人はいないんじゃないかってぐらいの勢いになっていた。