26話 ページ28
頭がぼうっとする。
無言で机を並べて、教壇に置かれた朝食を持っていくクラスメイトをどこか遠い目で見ていた。
脳はまだ眠ったままなのだ。
結局、昨日寝付けたのは４時を過ぎた辺りだった。
とてつもなく、眠い。
「・・・食べないの？」
聞こえた声に頭を上げれば、茅野さんが立っていた。
パンを二個手にしている。
私の分も取ってきてくれたのだろう。
「あー・・・ありがとうね」
食欲はないが折角持ってきてくれたのだから断るわけにもいかない。
ありがたく受け取って、乱暴に袋を開ける。
生温い牛乳で味のしないパンを流し込んだ。
左肩はまだ痛い。
「あのっ！」
「ん？」
突然大声で声をかけられ一瞬体が強張る。
どうも大きな音は苦手だ。
「あ、ゴメン。えっと・・・聞きたいことが、あって」
茅野さんもそれを察したのか、申し訳なさそうに体を縮こませた。
彼女特有のクセだ。
あまり好きではない仕草だが、気にしないことにして「何？」と続きを促す。
「・・・深夜、美術室に
その先は言わせなかった。咄嗟に口を塞いだからだ。
驚いたように目を見開く茅野さんを強引に立たせる。
ゆっくりと睨みつける。
周りからは死角になっているから、傍からはただ見つめあっているように見えるだろう。
「ちょっと二人でお話しよっか。」
私はなるべく明るく笑ってみせた。
・
トイレの個室に二人で入り、鍵をかける。
相対する茅野さんの目はひどく怯えているように見えた。
このトイレは音が反響しやすい。
誰かに聞かれたらマズい会話だ。
できるだけ声を潜める。
「・・・見てたんだぁ？」
思いのほか低い声になってしまった。
声音から私の機嫌を読み取ったらしく、茅野さんは顔を強張らせる。
「どこから？」
さながら蛇に睨まれた蛙だ。
「・・・太河さんが、先生に、怒鳴ってるところ・・・」
可哀想に、声が震えている。
止めるつもりは一切ないが。
「私の目的についても聞いた？」
正直に答えてね、と念を押すと彼女は申し訳なさそうに頷いた。
聴覚に敏感で寝る時も少しの物音で飛び起きてしまうような体質なのかもしれない。
・・・少し厄介だ。
「私にとってもアンタにとっても、すこーーし厄介なんだよねぇ・・・」
私は溜息を吐きながら、ポケットに入っていたものを取り出す。
ハンディタイプのそれは一般的なものより少し小型だ。
護身用に持っていたものを脅迫目的で使うとは。
何だかおかしくて、クツクツと喉の奥で笑う。
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理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！応援してます！！ (2022年8月23日 17時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
葉紅(プロフ) - もう更新しないんでしょうか？すごく面白いので続きが見たいです。続編と物語の更新楽しみにして待っています (2020年9月27日 0時) (レス) id: 915a610475 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - ヤバイですね！まさかの共犯になるなんて…！面白いです！更新待ってます！ (2020年1月24日 23時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)
ちーかま - すっご.....。作者様、絶対頭良いやん.....。 (2019年3月16日 10時) (レス) id: 8f9925b559 (このIDを非表示/違反報告)
ナナたん - 超大作ですね！ (2019年3月15日 20時) (レス) id: 0ab40017a4 (このIDを非表示/違反報告)
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