疲れたあなたを2434たちが出迎えてくれるそうです【短編集】

加賀i美ハiヤト 2 ページ41

一体何をどう考えたらそうなるの……



私が訝しげな目を向けていることに気づいたのか、違います違いますと慌てて大きく手を横に振る



「やましい意味ではなくて！！私とAさんが恋仲になった、という噂なら社員の方々の態度も変わると思いますし！」



私もAさんのことは憎からず思っているので、とごにょごにょと付け加える。



めちゃくちゃやましい意味じゃないですか、と突っ込むと違うんですよ！？とまた否定の言葉
いや何も違わなくない？？
……まぁ、でもちょっと可愛いかも
くすっと笑みをこぼして口を開いた



「私も社長のことは憎からず思っていますよ」



そう告げると、本当ですか！？と身を乗り出す社長をどうどうとなだめる



「待って、待ってください社長。でも、ですよ。今はムードというものが全くないです、わかりますね？」



社長は少し考えるとそれでは、と言って私に何かを渡してきた。



……鍵？



「私の家の合鍵です、もしよろしければ、今夜我が家に来て頂けませんか？」



顔に熱が集まる、社長はそういうことをさらっとしてしまうところがずるい
そんなの、今晩告白しますってことじゃん



必ず伺います、とだけ答えて私は社長室を飛び出した
本当に心臓に悪いよ、あの天然タラシ



落ち着くために自販機で缶コーヒーを買って休憩スペースで飲みながら、ふと社長との出会いを思い出す。



たまたま加賀美インダストリアルに引き抜かれて、
たまたま大きな企画を担当することになって、
たまたま社長と話をする機会があって、
たまたま社長と趣味があって、
たまたま一緒にお酒を飲むようになって、
たまたま恋に落ちてしまった。



思えば全て偶然なのだ
いや、ここまで来るともう運命かも
……なに恥ずかしいこと考えてるの、私



居た堪れなくて携帯を開くと、社長からLIMEが来ていた。
住所です、という端的な言葉とともにマップが送られている



本当に、今日行っちゃうのか、告白されちゃうのか



私は手に持った缶コーヒーをがっと飲み干した、いけない、まだ仕事があるんだ、集中しなければ……！
一旦このことは忘れよう、そう思って立ち上がると、遠くからこちらに走ってくる部下が見えた



なんだろう、空になった缶をゴミ箱に捨て、部下に近歩み寄る



「大変ですAさん！」



慌てる部下を落ち着かせて何があったの、と先を促す。部下は顔面蒼白だ、嫌な予感がする。



「企画が、企画が踏み倒されました……！」

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