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遠い昔こんな話をした。
「杏寿郎さんの夢はなに?」
「俺の夢は、A、君を世界一の幸せ者にすることだ。君の笑顔をこの俺が守りたい。そう、思っている!」
「……ふふ、ふふふっ」
「笑うんじゃない、俺は本気だぞ!」
「知ってる。でも、私、十分幸せですよ。杏寿郎さんがこうして私のところに無事に帰ってきてくれてるから」
肉体がなくなり、魂となった俺はずっと君のそばにいた。俺の死を受け入れられず何度も涙を流す君を見ていられなかった。
君は強い。だけど、本当は心の弱い人間だ。
そうさせてしまったのは俺自身なのかもしれない。
Aにとって、俺が生きがいになっていることは知っていた。だから、俺が死んだらきっと君は自ら命を絶ってしまう。思い出の詰まる川が見える橋で、必死に君を抱きとめた。
触れることすらできない俺には君を包み込むことしかできない。
「杏寿郎、私、母親になるの。杏寿郎との赤ちゃん……。私強くなるから、ちゃんと見ていてね」
ーーーあぁ、もちろんだ。
月日が経っても、俺に対する愛情が変わらない君が愛おしかった。まだ迎えに行くのは早い。そう何度も思っていた。
20年経ち、弱ってしまった君が俺に手を伸ばした。許してくれ。その手を掴んでしまったことを。君を迎えにきたことを。
「ーーー今、逢いに行きます」
これからはずっと君のそばにいると誓う。
そうだ、君に会わせたい人がいるんだ。A、君の両親だ。死んでもなお、二人は佐倉家の屋敷をずっと守っていた。
「A、おいで」
「うん」
俺の手を取り、歩き出す。
目の前に見えた両親に、Aは涙を浮かべて笑顔を見せた。
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るる - 読んでる途中に目から水が、、、、、、、、 とってもいい作品でした!!!!!! (7月25日 14時) (レス) @page50 id: daa8a87cdb (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 初めまして!涙なしに観れませんでした… (2021年9月26日 18時) (レス) @page50 id: fb083d1d07 (このIDを非表示/違反報告)
名無し12758号(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございます…!一話目から引き込まれて全て読みました、鼻水まで出してみっともない泣き顔で読んでしまいました…笑笑映画でもボロ泣きしましたがこれでも号泣してしまいました、素敵な話が読めて良かったです。本当にありがとうございます! (2020年11月23日 19時) (レス) id: 3be706ff9b (このIDを非表示/違反報告)
ちえ - 初めまして!このお話を深夜に見かけ一気に読みました。映画でも泣きましたが、このお話も号泣でした。素敵なお話ありがとうございます。何度でも読んでしまいそうです。 (2020年11月23日 2時) (レス) id: b7bf575f91 (このIDを非表示/違反報告)
raaaaaaam(プロフ) - 初めまして!私も一気に読み、深夜なのに号泣笑 隣に寝てる子供が起きるぐらい泣いてしまいました笑 煉獄さん、、最高!素敵な夢を見させて下さりありがとうございます(T_T) (2020年11月20日 4時) (レス) id: c6906907ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年10月26日 20時