今、逢いに行きます【煉獄杏寿郎】

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「A、これをやろう。俺からの結婚の申し込みと受け取ってくれ」



随分遅れてしまったが！と言いながら、懐から出した包みを私の手のひらに乗せてくる。なんですか？と聞きながら、包装されているそれを丁寧に剥がし箱を開けた。



「………あ……かんざし……」

「あぁ、そうだ！」



初めて杏寿郎からもらう贈り物だった。

綺麗な硝子玉のついた簪には、桜の花びらを連想させる飾りがついている。この時代、結婚を申し込む際、簪を送る殿方が多いそうだ。


杏寿郎さんが私のことを考え、お店でこれを選んだと思うと涙が出るほど嬉しかった。つけるのがもったいないぐらいだ。


まとめていた髪をほどき、その簪をつけて見せれば、彼は「やはり俺が思っていた通り似合う」と手を伸ばした。流れ出た髪の束を一束手に取って、そっと接吻を落とす。



「恐らく次の任務から帰ってきた頃にはここの桜も満開になっているだろう」

「そんなに先になってしまうんですか？」

「うむ、俺にも正確な日程がわからない」

「待ってます。私、……杏寿郎の帰りを待ってる。………待ってるから……っ」



待ってるから、早く帰ってきて。

待ってるから、私をずっと照らす光でいて。

待ってるから、待っているから、どうか、どうか。



「………待ってるから、無事に帰ってきて……ください……お願い……だから……っ」



止まらない涙に嫌気がさす。
いつからこんなに彼への愛が重くなってしまったんだろう。彼まで失ったら、そう思うと怖くて。



「全く君は……」

「………っ」

「その泣き顔は、俺の前でしか見せるんじゃないぞ」



まだ日が沈むには早い時間。
杏寿郎の瞳に映る私はまるで泣きじゃくる子供のよう。私の顔に、杏寿郎の影が降りた。



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