31 ページ32
*
あの日ーーー鬼が家を襲ってきた日、雨が激しく、酷く雷が鳴っていた。父は私と隼人、そして母を逃すためにオトリになった。そして、母は私と隼人を押し入れに隠すと一人、鬼に立ち向かった。
今度押し入れを開けるのは母であろうと何度願ったか、暗闇に差し込んだのは真っ赤に血に染まる鬼の顔。
「………風門、ゆっくり息を吐け」
涙が止まらない。息ができない。
近くに落ちた雷のせいで電気は全て消えて点かなくなってしまった。暗い中、両親が殺された日を思い出し、過呼吸に陥る私を彼は介助してくれる。
それでも頭に浮かぶあの日の光景に、息はうまく出来なかった。不意に引き寄せられ、抱きしめられる私の背中は彼によって何度か優しく叩かれた。
「………安心しろ。隼人も無事だ。鬼なんていねぇから。………安心して、息をしろ」
息を押し殺していたあの日。
今は目の前に鬼なんていない、息を押し殺す必要もない。少しずつ過呼吸は治ってくる。
落ち着いた頃には電気も回復し、隼人が走って水屋にやってきた。過呼吸に陥ったせいで、動けなくなっていた私を不死川さんはそっと抱えあげる。
「………ごめんなさ……い…」
「……大丈夫だァ」
部屋まで運んでくれた彼は、「水でも飲むか?」とまた立ち上がろうとした。行ってしまう不死川さんの羽織を掴み、思わず「行かないで」と口にしていた。
「………は?」
「………行かないで………ください……」
自分でもどうしてそんなことを言ってしまったのか、分からず声がか細くなってしまう。カァッと顔が赤くなり、掴んでいた彼の羽織を離しては閉じこもるように布団に潜り込んだ。
.
1065人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
呑子(プロフ) - 2話のひなき様がひなぎ様になってます (2020年6月11日 21時) (レス) id: b937ad49b1 (このIDを非表示/違反報告)
菜一郎(プロフ) - きゃああああ名前で呼んで欲しいってとこ可愛すぎぃぃいいいい (2020年5月29日 17時) (レス) id: 2c549b1da3 (このIDを非表示/違反報告)
鏡花(プロフ) - ぐはっ!告白ぅぅぅ!!尊い!!!死ぬ!!!! (2020年5月25日 23時) (レス) id: c8a359bcaf (このIDを非表示/違反報告)
Ø(プロフ) - こんなに素敵な小説に出会えてよかったです!大変かもしれないですが無理せずがんばってください!応援させていただきます!! (2020年5月21日 0時) (レス) id: 712c3e0bb6 (このIDを非表示/違反報告)
ハチハチ1129(プロフ) - 美桜さんの作品最高です!私も逮捕されたい、補導されたいと思いました(*^ω^*) (2020年5月19日 6時) (レス) id: 12ce184d67 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年5月16日 13時