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*
ーーー誰……。
「その人にね、『Aちゃんのお知り合い?』って聞いたら『そんなもんだ』って言っててね」
「…………おばさん、その人って……」
「男の人よ。顔に傷があってね、ちょっと見た目は怖かったけど話してみると優しくAちゃんの話をしてくれたわ」
…………師範だ。
そういえば、前に弟と妹がらむねが好物だって話したことがある。そんなの家族と師範そしておばさん以外は知らないことだから。
よくよく考えれば、毎年家族の命日である一週間前になると必ず師範はどこか出かけていた。ついていこうとすれば怒られるし、どこに行くのかも教えてくれなかったけど、こういうことだったの?
「…………あら、Aちゃん泣くほど嬉しかったの?」
「…………私、師範と出会えて良かった……本当にっ」
久しぶりにこんなに泣いたかも。
いつも一緒にいるせいで、薄れかけていた彼への感謝の気持ち。鬼に襲われた時、私を助けてくれたのが師範で本当に良かったーーーそう思わされる。
早く師範のいるお屋敷に帰りたいなぁ。明日が来るのが待ち遠しい。
「(師範、ありがとうございます)」
涙を拭い、おばさんにニコリと笑った。
*
翌朝、帰る私をおばさんと末吉くん、そして彼のお母さんが見送ってくれた。なんだなんだ末吉くん、君私が帰るのが寂しくて見送りに来てくれたのか。
笑えるなあ(本人は本気で寂しがってる)。
「じゃ、次生きてたら来年来ますね〜。みんなも戸締りよくしてね。あ、そうだおばさんにこれお守りあげる」
藤の花の香り袋。癪だけど末吉くんにも渡しておく。「お兄ちゃんにもたくさんお話できたし来て良かった」と呟いて、彼らに手を振った。
*
「ねぇ、Aちゃんって知ってるの?あの日、お兄さんの遺体だけ現場からなくなってたこと……」
「…………知ってると思うんだけどねぇ。Aちゃんを引き取って育ててくれた男の人には2年前来てくれた時に話したんだけど………」
「アイツ絶対ぇ知らねぇぞ。つーか、それ言ったらきっとAはあの兄貴のこと探してるはず」
私のいなくなったあと、そんな会話をしていたとはつゆ知らず、私は鼻歌混じりに帰路についていた。
*
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紅梨 - なんか不死川さんの優しさがにじみ出てました!あと、不死川さんの継子を想像したりして読みました。すごく微笑ましい話ですよねーww (2020年3月15日 19時) (レス) id: e55b1dd1f6 (このIDを非表示/違反報告)
白夜(プロフ) - 美桜さん» 態々御返事していただきありがとうございます!採用していただき感謝感激です!!これからも更新無理しない程度に頑張ってください。応援してます。お身体にはお気をつけて! (2019年12月16日 4時) (レス) id: 6250b56f0b (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 白夜さん» コメントありがとうございます!お返事遅くなってすみません。タイトルネタ採用させていただきました!これからもよろしくお願いします! (2019年12月15日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - となさん» コメントありがとうございます。お返事遅くなってすみません。何回も読んでもらえて嬉しいです。これからも頑張ります!! (2019年12月15日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 結夢さん» コメントありがとうございます!お返事遅くなってすみません。指摘ありがとうございます。疲れのせいで間違えました(言い訳)これからもよろしくお願いします (2019年12月15日 20時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2019年11月23日 13時