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悟くんは私の手を引いて、学校の寮の敷地内から外へ。2月はまだ寒い。もう春がやってくるというのに、春の温度はどこへやら。
「Aも春から大学生かぁ。僕はあと一年あるからなー」
夜の公園って不気味だった。
だけど、まだ出会ったばかりの小さい頃悟くんはよく真夜中に私を連れて公園に行っていた。ある時を境に連れて行ってくれなくなった。
公園のブランコにおしりを乗せれば、錆びた鎖が音を立てる。悟くんも隣の空いているブランコに座るかなと思いきや全く座らなくて。私の前で屈んで、私の両手の指先を取るように掴んだ。視線を上げた彼の青い瞳に私が映り込む。
「僕ってさ、独占欲強いんだよね」
「………独占欲、」
「そうそう。アイツが教えてくれたんだけど」
アイツ……、もしかしたら夏油くんかもしれない。
いつからか、悟くんの口から「傑」という親友の名前が出てこなくなった。一緒にいるところも見なくて、高専に遊びに行っても彼の姿はなかった。
硝子ちゃんに聞いたら、いつもの様子だったけどどこか曇った表情だったからそれ以上は聞けず。
「大学ってさぁ、やっべぇサークルとか夏にワンナイトとかってよくあるっていうじゃん?」
「……やっべぇサークル?ワンナイト??」
「そうそう」
触れていた手から一度手を離した。
もう一度触れた手は私の手を挙げるようにヒョイと少し持ち抱えられる。手の甲に唇を押し当てる悟くんに、心臓がさっきから煩く太鼓を叩いている。
「まあ長年初恋拗らせてるAが、僕以外の男に目移りするなんて思わないんだけど」
「すごい自信だね」
「うん、実際そうでしょ。ま、だけど保険と男避けつけとこうと思って」
触れていた左手に、悟くんはシンプルだけどどこか品のある輪っか……、指輪をつけてくれた。左手の薬指、そして親の前で「将来僕の奥さんになる人」と紹介されて。
「………プロポーズ?」
「学生結婚はあんまり良くないらしいからね。大学卒業したら、迷わず僕のところにおいで。すぐに僕だけの奥さんにしてあげる」
そうあの時と同じ。
公園に連れてこられて怖くて泣いた。悟くんはシロツメグサで小さな指輪を作って私の指につけてくれたの。私も今まで忘れていたからきっと悟くんは覚えていないかもしれない。
「使用人から、恋人。恋人から、お嫁さんになれる私ってすごい昇級してるね」
「僕に気に入られた末路だね」
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沙羅(プロフ) - お疲れ様でした!完結おめでとうございます(^ω^)長い間読ませていただきました。番外編楽しみにしてます!甘々な展開、期待しております! (2021年4月19日 22時) (レス) id: f64d60a5d5 (このIDを非表示/違反報告)
踊る宝石(プロフ) - はじめまして!本当にこの作品大好きです。番外編がこれから少しあるんですかね?更新楽しみにしてます! (2021年4月19日 1時) (レス) id: 7183f6d526 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 美桜さん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年4月14日 21時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
飼口(かいぐち)(プロフ) - 一人称が僕になってる…!てことは夏油はこのときにはもう…? (2021年4月13日 21時) (レス) id: 57441fdd79 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 美波さん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟でお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。楽しみにしてます。 (2021年4月6日 18時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年4月4日 19時