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「おい、どうした」
「え?」
「いつもと違ェ」
不味いか?と聞いてくる師範に、「美味しいです!」と笑顔を向ける。こんな美味しいものを食べているのに、頭ではあの日のことを思い出していた。
「師範、もしかして……」
「あ?……あァ」
「私教えたことありませんでしたよね」
鬼殺隊の剣士登録にも私の生まれた日は不明で出してたからお館様も知らない。思わず顔を俯かせる私に、師範は私の九州に住むおばさんから聞き出したと教えてくれた。……まあ一番近い親戚だし、そこを当たれば完璧だよね。
私はお礼を言うと、来年からはなにもしないでくれとお願いした。ひどい話だよね。わかっている。だけど、どうしても思い出しちゃうから。家族に祝ってもらった誕生日、祝えてもらえなかったあの日。
「俺はこれからは毎年祝うぞ。てめぇの生まれた日をな」
「…………だから、私は祝ってもらわなくても、」
「A」
顔を上げて師範を見る。彼は、懐から何かを出すと私にそれを渡してきた。多分、誕生日プレゼントだ。なんだか受け取る気にもなれずに手を膝の上で握りしめていると師範が小さく話し出した。
「てめぇが自分の生まれた日を祝ってもいたくねェ理由はなんとなくわかる。家族を思い出すからだろ?吹っ切れたように見えててめぇはまだ過去に囚われてやがる」
「…………」
図星すぎてなにも言えない。
そんな私に、師範は「あの悲劇の日を忘れさせるぐらい俺がてめぇの生まれた日をいいもんにしてやるからよ」と、その包みを受け取れと顎で促した。
中にはかんざしが入っている。
可愛くて綺麗なかんざし。手にとって、眺める私に師範は再び言った。
「それに今日はてめぇと俺が出会って5年目だろ。そんな白けたツラしてんじゃねェよ」
「………っ」
「これからずっと俺がてめぇと一緒にてめぇの誕生日祝ってやっから」
あぁ、お母さん、お父さん。
私、この人から両手では抱え切れないほどの愛情を貰っている。自分の誕生日が嫌いだったのに、今日師範に素敵な誕生日に変えてもらえたよ。
「…………師範ありがとうございます」
「……おォ…」
「それとかんざしってなかなかろまんちっくなことしてくれますね」
「は?」
なにも知らない師範にふふっと笑う。彼はなんだ教えろと言うけれど教えてあげない。ーーーかんざしを女性に渡すのは求婚の意味を示しているって知ったら師範、どんな反応しますか?
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ぶどう - カッコ仮ってシュタゲかw w (2021年2月4日 21時) (レス) id: 87d010c47c (このIDを非表示/違反報告)
りんごたん - むいくん…( ;∀;)むいくんが悲しすぎる… (2020年3月1日 17時) (レス) id: b6aa212c61 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - 伊黒さんのもつくって欲しいです (2020年1月26日 0時) (レス) id: 930d314957 (このIDを非表示/違反報告)
いちゅき - オチはやっぱり実弥がいいですねぇ (2020年1月25日 12時) (レス) id: e629abc83d (このIDを非表示/違反報告)
奈胡 - 毎日楽しく見させていただいてます。ありがとうございます!希望としては恋のパターン希望です〜(*'-'*) (2020年1月25日 3時) (レス) id: 6815733e3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2020年1月11日 20時