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映画館の入場案内までのちょっとした時間。飲み物を買いに行くと行った彼。スマホを開き、彼のアイコンをタップする。表記名を「実弥さん」から「実弥」に変更した後、その字をじっと見つめていた。
「……えへへ」
それを見ては顔をでれでれと綻ばせていると、「何ニヤついてんだァ」と声をかけられた。目の前に差し出された飲み物を受け取って「秘密」と言う。ちぅっと飲む。
ん?と喉を潤した甘いそれに「これ、実弥のじゃ」と彼が持つ飲み物と交互に見た。どうした?と私の挙動を不審がる彼に「甘いの」と伝える。
「……あ、悪ィ。間違えた」
私の手からひょいと飲み物を取り上げて、自分が持っていたものを持たせる。実弥はそれを口につけると「あー、これこれ」と言いながら、映画館の入り口の方へと歩いていく。
間接キスだ……と初々しく顔を染める私は誤魔化すようにコーヒーを口にした。
映画が始まり、中盤。この映画は泣けるとSNSでよくトレンドに入っていた。本当に泣けた。ハンカチを持ってきていて良かったと涙を拭きながら、隣をチラリと見た。
「(え、)」
私以上に泣いている人を見てしまった。
いや実際泣ける物語だから、泣いてほしいけれど。この人が涙を流すなんて思いもしなかった。鞄からティッシュを出して、実弥の服を引っ張るとそれを渡す。
彼は顔を手で隠し、私には見えないようにしてティッシュを受け取った。じっとその様子を見続ける。前を見ろと小声で言われ、見つめるのをやめた。
「泣けましたね」
「あァ」
鼻を擦る実弥は「引いただろ」と自分が泣いていたことについて聞いてくる。何言ってるんだと彼を見上げる。何も言わない私を見て彼は「なんか言えよ」とイエスかノーかを求めてきた。
「どうして私が引くなんて思ったの?」
2択を求められていたのに、質問に質問で返す。
実弥はため息をつくと「……いや、引かなかったならそれはそれでいい」と顔を再び片手で覆うと歩き出した。
その横顔から見える頬が赤いのは、私の気のせいでしょうか?
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青子(プロフ) - もう、切なくて胸が痛いです…更新楽しみにしています!!よろしくお願いします!! (2021年1月24日 9時) (レス) id: 32fb39756e (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - めーこさん» コメントありがとうございます!そうだったんですね、、出してからちょっとしたころに勝手に消えちゃって再上げしたんです、、また出会ってくれてありがとうございます、、まだ続く予定なので最後までご愛読お願いします! (2021年1月23日 23時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 菜一郎さん» コメントありがとうございます!映画館のくだり〜!ありがとうございます!!キュンとくるようなエピソードこれからも入れるよう試行錯誤練ってみます!! (2021年1月23日 23時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - *カフェオレさん» コメントありがとうございます!単純なのでそう言ってもらえてうれしいです、私も好きです!! (2021年1月23日 23時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
めーこ(プロフ) - 初めまして!初コメです!以前読んでて突然消えてからずーーーーっと気になっててまた出会えたことに感謝感激雨あられです!更新頑張ってください!陰ながら応援してます!! (2021年1月23日 22時) (レス) id: 2c11b94916 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年1月14日 18時