弟の想い人に恋をしたはなし【不死川実弥】

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お店に入り、テーブル先に案内されると鞄を隣の椅子に置いた。汚れないように、とお気に入りのぬいぐるみがついたキーホルダーを鞄の中に仕舞い込む。



「それ気に入ってんのかィ」

「はい。犬のお巡りさん。昔から大好きなんです」



犬のマスコットがお巡りさんの制服を着ている。
よく迷子になりがちだった私によく匡近くんが迷子の子猫ちゃんの歌を歌ってくれていた。それに出てくる犬のお巡りさんが好きだった。


適当にいくつか料理を頼み、警察のお仕事についていろいろ話を聞いた。二人が仲のいい理由や警察官になった理由。



「匡近くんはなんで警察官になろうと思ったの？」

「俺はな、モテたくてなったんだ」

「聞かなきゃよかった」



警察官になって今の嫁とも会ったんだと惚気始めた匡近くんをよそに、実弥さんにも聞く。実弥さんは別に大した理由じゃねぇよと言って教えてくれなかった。


明日が休みの匡近くんがお酒を頼み、酔っ払いになってしまったところで食事は終了した。奥さんが迎えに来てくれて彼を預ける。手を振ってお見送りをする中、「それじゃあ私はこれで」と実弥さんに頭を下げた。



「送ってく」

「え？」

「女を一人で帰らせる訳にはいかねぇだろ」

「……ありがとうございます」



二人並んで帰路に着く。

実弥さんは前から走ってくる自転車に驚く私を何度か庇ってくれた。会話を必死に考えるけれど、面白い話題が見つからない。


私といて楽しいのかなと不安に駆られてしまった。顔を俯かせていると、「今度、」と実弥さんの方から会話を持ちかけられた。



「玄弥の誕生日が近くてなァ。プレゼント買いに行こうと思ってんだが、……一緒にどうだ？」

「……い、行きます…！！」



飛び跳ねるようにそう答える。

彼はスケジュールを確認して、この日は空いているか？と尋ねてくる。お父さんと買い物に行く予定だったが、キャンセルしよう。


やったぁ……と小さく呟いた私の言葉を拾っていた実弥さんが「そんなに嬉しいのか」と首を傾げた。嬉しいです、とっても。



「早くこの日になって欲しいぐらいには」



あはっ、と笑顔を浮かべれば彼はそうかィと言って前を向いた。


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