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彼と初めて会った時と、同じだ。


その青い瞳の中に吸い込まれるような感覚。



目を逸らすことなんて許さない、と言わんばかりに私の事を捉えて離さない。



彼は私から目を逸らさなかったし、私も彼から目を逸らすことが出来なかった。



お互い、特に何かする訳でも、話す訳でもない。

時間だけが静かに流れているはずなのに、この空間だけが、まるで時が止まっているよう。




__ぽたり、


彼の頬に、私の髪を伝った水滴が落ちる



『……ぁ、』


それを見て、やっと私の中の時計が動き始めた



『っ!ごめん、わた……し、』



突然、掴まれていた手を彼の方へ引かれる



『えっ、』


崩れる体制、少しの衝撃。


突然の事に何が起こったか分からない


目の前は、真っ暗

冷えた体に、じんわりと伝わる体温

安心するような、この匂い。



とくん、とくんと、音を立てる心臓の…音。



「………」


『…悟、くん…?』



気づけば、私は彼の腕の中にいた。


彼はソファから立ち上がっていて、私をすっぽりと包み込む。

いきなりどうしたのだろう、そんな思考とは別に、久しぶりに彼に触れられて浮かれている気持ちがあった。


…だが、そんな感情に浸かっている場合ではない


『さ、悟くん!私びしょ濡れだか「うるさい、」


胸板を押し返しながらそう言うも、言葉もその行動も阻止され、彼は私を抱きしめる力を一層強くした。



もしかして、怒っている…?
何となく、彼のその雰囲気なら読み取れた。


彼の表情は見えない。だから今、彼がどんなことを思い考えているかなんてわからない。


私はただ、彼にされるがまま。そんな状態で時間が過ぎていく

すると今度は突然、腕を解いたかと思えば、私の右頬にするりと手を当てた


「……つめた、」


それだけ言うと、彼は再び私を腕の中に閉じ込める



『……悟くんまで濡れちゃうよ』

「……いーの、」


彼は、私の事を心配してくれていたんだ

だからこんな遅くまで、私の帰りを待っていてくれたんだ


『心配、かけてごめんね』

「ホントだわ、電話はいくらかけてもでねーし、帰ってきたと思ったらなんかびしょ濡れだし」


『……湖に落っこちちゃった』

「はぁ?んだよそれ」


彼に触れられているところから、じわじわと熱が広がっていく


『(……あったかい、)』


彼の優しさが、凄く嬉しかった。嬉しくて嬉しくて、仕方がない。

それなのに、彼の優しさが、小さく私の胸を締め付けた。



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らいらっく(プロフ) - きのこ姫さん» そう言ってもらえてとっても嬉しいです😭続き頑張って書こうって気持ちになれますありがとうございます!🫶 (3月12日 12時) (レス) id: 794256331a (このIDを非表示/違反報告)
らいらっく(プロフ) - 名無し37619号さん» 嬉しいですありがとうございます!!文字数制限に阻まれながらも頑張っております🥹 (3月12日 11時) (レス) id: 794256331a (このIDを非表示/違反報告)
らいらっく(プロフ) - ちむさん» ありがとうございます!!そう言ってくださるととてもやる気になれます😭😭 (3月12日 11時) (レス) id: 794256331a (このIDを非表示/違反報告)
らいらっく(プロフ) - みょんさん» あわわありがとうございますとっても嬉しいです😭私も早く夢主ちゃんの秘密バラしたいです…🥺更新頑張ります!! (3月12日 11時) (レス) id: 794256331a (このIDを非表示/違反報告)
きのこ姫(プロフ) - すごい!面白かったです!はやく続きがみたいです。 (1月4日 13時) (レス) @page35 id: 37e234dc71 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らいらっく | 作成日時:2020年12月7日 22時

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