Bitter Cream Soda

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「Aとはファンとタレントっていうよりスタッフと患者で知り合ったからさ。

最初に言った方は‥まぁいっか。

でも、二番目の方は‥わかるでしよ？Aには、わかってほしい。

Aの事、遊びで手出せるような子じゃないって思ってるし」



わたしは頷く事も出来ないまま、ただ俯いて嶺亜くんの話を聞いた。

嶺亜くんは俯いて頬にかかったわたしの髪をそっと耳に掛けてくれた。

その手は優しかったけど、溢れそうな涙を隠せなくなったわたしの心は、余計に剥き出しになって苦しくなる。


嶺亜くん‥。

あんまり優しくしないで‥。

そう言いかけた瞬間、嶺亜くんの方が一瞬早く、思いがけない言葉を口に出してきた。



「俺、手出せないから‥俺からは触れないから

A、俺の事好きに触っていいよ」

えっ？？？

びっくりして目を見開いたわたしに、微笑みかけるように見つめてきた嶺亜くんの瞳が優しい。


「言っとくけど、今まで他の女の子に、こんなことさせた事ないからね？

Aは‥特別、ね」

そう言って、嶺亜くんは目を閉じて、治療台の上に大の字になるように仰向けになった。

えっ？ホントに触っていいの‥？

戸惑うわたしに

「早くしないと時間切れだよー」

またからかうように嶺亜くんは笑った。



いいのかな‥。

戸惑いながら嶺亜くんの身体に手を伸ばす。

そっと嶺亜くんの肩の辺りを触ると、Tシャツの上からでも嶺亜くんの体温を感じる。

それから左寄りの中央部、心臓の上にそっと手を乗せた。



嶺亜くんの心が、これ以上痛まないように。

嶺亜くんが、嶺亜くんらしく進んで行けるように、

願いを込めて。



感じる脈が少しだけ早い。

こうしていると嶺亜くんへの愛しい想いが一気に溢れてきてしまって‥

このまま嶺亜くんの胸に抱きついて、好きだと言って泣けたらどんなにいいだろう。

そんなことを思ってしまう。



誰にも秘密にするから‥

一時の遊びでいいから抱いてほしいと口に出してしまいたい。

でも‥駄目だよね‥そんな事、言っちゃ‥

嶺亜くんを困らせちゃうよね‥



涙を堪えながら、一瞬だけ、嶺亜くんの胸の上にTシャツ越しに唇を寄せて‥




それからゆっくりと身体を離した。

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