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しばらく沈黙した後、
嶺亜が口を開いた。
「他って‥？
他って何‥？
俺が、
克樹の他の、何処に行くの‥？」
そう言って泣き出した。
初めて見た。
嶺亜が泣いたところ。
10年一緒に居て、初めて。
涙脆くて挫けやすくて‥
いつも涙を流すのは俺の方で。
嶺亜はそんな俺をいつだって笑い飛ばしてくれていた。
そんな嶺亜が泣くと思っていなくて、
正直、慌てた。
「えっえっえっ嶺亜、大丈夫？」
泣きながら俺のお腹を軽くパンチしてくる。
「大丈夫に見えるか」
涙を見せないように俯きながらサンドバッグのようにポスポスとパンチしようとする嶺亜の拳を受け止めて、肩を抱き寄せた。
「ごめん‥嶺亜‥ごめん‥」
ひとしきり俺の胸で泣いた後、
嶺亜はゆっくりと話し始めた。
別にからかってるとか身体目当てだと思ってるとかじゃなくて、
じれったかった。
正直、克樹の方から付き合おう、って言ってほしくて、でもなかなか言ってくれなくて
自分から言うのもシャクだったし
あんな風に言ったら、頷いてくれるかと思っていた。
そしたら「付き合ったら、いつかね」って言おうと思っていた。
克樹が怒ると思わなかった。
他に行けなんて言わないで、
克樹の他のところなんて何処にも行きたくない‥
そう言ってまた嶺亜は泣き出してしまった。
「他で、なんて本心じゃないよ。
これっぽっちも思っていない。
ごめんね‥嶺亜。
何処にも行かないで‥
俺のそばにいて」
また強く抱きしめ直す。
小さい子みたいに泣く嶺亜が愛しくて仕方なかった。
涙を拭い、嶺亜の頬をゆっくりと撫でる。
ようやく泣き止んだ嶺亜が
「キスしていい？」
聞いてきた。
ちょっとびっくりして嶺亜を見つめてしまう。
したかったら許可なんて取らないでする人かと思っていた。
「だって‥俺からするの初めてで‥」
嶺亜の赤い顔も初めて見た。
思わず笑みがこぼれる。
「何笑ってんだよ」
またパンチされた。
‥ずっとこんな風に、ふたりで笑い合いたかった。
気持ちを探り合う、どこか駆け引きの様なキスじゃなくて
ただ「好き」って気持ちを伝えるだけのキスをしたかった。
見つめ合って、どちらからともなくキスをする。
幸せを確かめるようにまた笑い合う。
「俺と付き合って」
「ちゃんと付き合おう」
ふたりほとんど同時に言って、
それが可笑しくてまた、笑い合った。
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りぷる(プロフ) - ベルマークが100個１００個さん» コメントありがとうございます♡感想言っていただき励みになりました。なかなか更新出来ていませんが、これからもお読みいただけると嬉しいです！ (5月14日 17時) (
レス) id: 37903b9c18 (このIDを非表示/違反報告)
ベルマークが100個１００個 - 面白いと思いますこれからも期待してます (5月14日 16時) (レス) @page33 id: 9c8e27407b (このIDを非表示/違反報告)
りぷる(プロフ) - 名無しさん» 名無しさんコメントありがとうございます！嬉しいです！あったかいお言葉いただきやる気が出ました！名無しさんの事も応援してます！ (2021年9月8日 16時) (レス) id: 37903b9c18 (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - 遅れましたが移行おめでとうございます〜！りぷるさんが描く白さんが大好きです……！これからも応援してます(^^) (2021年9月8日 15時) (レス) id: 8d128bf771 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りぷる | 作成日時：2021年9月4日 11時
