木槿のふたり (ページ36)

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クリスマスケーキの広告ページ36

福岡公演も無事に終え、残すところ東京ドーム4公演となった12月の半ば。

テレビでは毎日のように嵐がいて、街には大きな広告や、嵐が表紙の雑誌たちが並んでいる。
たくさん見かける、ということは、彼らはその分たくさん働いているわけで。

結局、中打ち上げの時も松本さんと話せないどころか、あれから一度も会っていない。

「もうすぐクリスマスか…」
ポストに入っていたクリスマスケーキの広告をみながら、エレベーターに乗る。

クリスマスは、好きじゃない。

………圭太を失った日、だから。

アメリカで働きだして２年が経ち、私は当時、毎日が楽しくて楽しくて仕方がなかった。
休日返上で勉強もしたし、毎週末色んな舞台も観に行った。

そんな中でも毎日圭太とはテレビ電話もしていたし、圭太が日本から遊びに来てくれたこともあった。

「いつ結婚しよっか」
「明日しちゃう？」
「バーカ！急すぎだから」

「子供は2人がいいな」
「圭太と私みたいな兄妹がいいね」
「一緒に親バカ目指そうぜ」
「やだよー！」

「結婚式、絶対Aの親父さん泣くじゃん」
「いや、案外圭太の方が泣きそう！」
「え〜俺はほら、クールにキメるからさ」

たくさんたくさん、未来の話をした。

そんな未来は一生来ないことになるとも知らずに。