木槿のふたり (ページ19)

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幻のお酒ページ19

「じゃあ私、ちょっと食材とか買い足してから帰りますね！」
「わかった、お酒とつまみは俺ん家あるから持ってくわ」
「ありがとうございます！」
「じゃ、あとで」

流石に近所とはいえ、スーパーからマンションまで一緒に歩くわけにはいかないからね。うん。

「にしても、松本さん相手に生姜焼きと…何作ろう…？」

とりあえず冷蔵庫の中身を思い出しつつ、いくらかの食材を適当に買い足して帰路についた。

「ただいま～」
今日出かける前に軽く掃除しておいて良かった…。
とりあえず人に見せられる部屋だ。多分。
　
買った食材を冷蔵庫にしまいながら、ふと思う。
松本さん、いつ来るんだ…？！
料理が出来たら私が呼ぶパターン？それとも…。

"ピンポーン"

「はい！」
「あ、ごめん、来るの早かった？」
慌ててドアを開けにいったから、片手に牛乳を持ったままだった。恥。

「いや全然、大丈夫です、どうぞ！」
「おじゃましま～す」

松本さんは廊下をてくてく歩きながら、「間取りがうちと完全に逆だ～ヘンな感じ！」と楽しそう。

「まだ全然料理作ってもなくて…」
「さっき帰ってきた音したからさ、作りながら一緒に飲んじゃえ！って思って」

「これとかどう？美味しいしオススメ～」なんてちょっと見たこともないお酒を開けてくれた松本さん。

「じゃ、乾杯！」
「いただきます！」
家からわざわざ持ってきて下さったグラス。
この方は全てに凝っていらっしゃる…ほんとにストイックな人なんだな…なんて思いながら、ひと口。
　
「おいしっっ！」
「はは、リアクションが素晴らしい！」
どうやら、なかなかに希少なお酒のようで、松本さんは目をキラッキラさせながら説明をしてくれた。