木槿のふたり (ページ18)

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スーパーでこんにちはページ18

それから聞いてるだけでおなかが痛く感じるような陣痛の時のエピソードなんかを聞いて、菜々のご両親と入れ替わりで病院を後にした。

あ、何となく昨日の話をしそびれてしまった。

「にしても、可愛かったなあ～」

家の近所のスーパーで、野菜を選びながら顔が綻ぶ。
側からみたら、怪しい女だ。

でもやっぱり赤ちゃんは天使のようで、何故か自分まで浄化されたような気分。

…いつか私も、母になるのだろうか。

菜々のベビちゃんを抱っこするあまりにぎこちない私の写真をみて、「しばらくは無いか～」と呟いた。

「何がないの？」

突然後ろから飛んできた声に驚き、「ぅわッ！」と色気のない声がでた。恥ずかしい。

「わ！松本さん！こんばんは」
「こんばんは、夕飯の買い出し？」

人は少なめだけど、一応周りに気を遣ってコソコソ話のトーン。ヒィ…顔が近い。

「ん～っと、その感じだと今日は生姜焼き？」
カゴの中の食材をチラッとみただけで分かるなんて。
松本さん本当に料理が得意なんだな…。

「その予定です、生姜焼きにしようかと」
「おっ！いいな～」
「松本さんは？」
「今日は作るの面倒な気分だったから、適当につまみを買おうと思って」

ほら、と松本さんが持ち上げたカゴの中には、えだまめとかチーズとかチョコレートとか、"THE つまみ"というものがどっさり入っていた。

「意外…！」
「え？なにが？」
「松本さんもこういうもの食べるんですね」
「うーん、料理が面倒な時とかは結構普通に食べるよ、本当はやめた方が良いんだけどね」
「そうなんですね…、あ！あとで昨日言っていた資料観ながらご飯、よかったらどうですか？」

あ。またやってしまった！！！
あまりに普通に話して下さるから、ついうっかりご近所さんみたいなお誘いを………！

「迷惑ですよね、あのすみま…」
「えっ！マジ？いいの！？」
「え？」
「いやぁ～実はさ、ちょっとね、ちょっとだけ期待してた」

「図々しくてすみません…」と肩をすくめて笑う松本さん。

きゅん…………

え？なに、きゅん……って。
少しの動揺を、急いで笑って誤魔化した。