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わんちゃん wtnb ページ21

私は変人らしい。
自分でも自覚はある。私の存在する世界では一般的に私のような人間が変人だと思われていることを知っているから。
ただ私だけの小さな世界では私は一般的である。

なんて小難しいことを考えていると今日もしっぽを振ってくる可愛い可愛いわんちゃんが一匹。

「今度は何書いてるんですか?」

ここに居るのは犬ではなくわんちゃんなのだ。私の世界では。渡辺航平という耳としっぽの生えたわんちゃん。まぁ一般的には人間だけど。

「珈琲持ってきたんだけど飲みます?」

このわんちゃんはとてつもなく愛らしい。そして何故か私に懐いている。ただのマンションの隣人で底辺の作家という汚名を被っている私に。

「何故この部屋に居るんですか?」

「だって今日も鍵空いてましたもん。」

不用心な私も私だか。ただの隣人の部屋に勝手に上がり込んでくるのも如何なる物かと。

「今日は何の話を書いてるんですか?」

星を宿すようなその目は、まるで私を吸い込むように私の目を見つめてくる。

「野良犬と少女の話。」

「今度のモデルは誰ですか?」

君だよ。なんて言ったらこのわんちゃんはきっとこの本を読もうとするだろう。

駄目だ。

なんせこの話は家族にも友達にも裏切られ、愛なるものを知らずに育った少女が一匹の野良犬と出会い、行き過ぎた愛ゆえに閉じ込め。殺してしまうのだから。

「誰だろうね」

「いつもはモデルの人がいるのに今回はいないんですね」

何故かしっぽと耳をしゅんとさせ伏せ目になるわんちゃん。なんと愛らしい。

「先生は野良犬が落ちてたら拾いますか?」

何故この話と同じような内容を疑問として私に聞いてくるのか。

「冒頭少し読んだだけですよ。」

しゅんとしてこちらを見てくる。

「私は…そうだな、拾えないと思う。」

「拾えないんですか?」

きっと拾ってしまったら私はこの主人公と同じ事をしてしまうだろう。それを知っているからこそ拾えない。拾いたくない。

変人であれ人殺しにはなりたくはない。

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設定タグ:QuizKnock , 短編集   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:しろまる | 作成日時:2019年8月6日 14時

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