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今気づきましたみたいな顔をして逆に俺の手に指を絡めてくるこいつ。俺と右手を繋いだまま、スカートをたくし上げてわざとらしく脚を伸ばしてバシャバシャと水を蹴り上げながら歩いていく。
なにが楽しいのかはわからないが、これ以上深いところまで行ってしまう心配はなくなったようだ。
俺は見ているだけ凍えるような彼女を尻目に、肩を窄めて身体を震わせる。芯から冷えるってこういうことなんだなぁ。
ずっと鼻をすすって横目で彼女を見れば、俺の震えが思いのほか大きかったのか歩みを止めて俺の手を凝視していた。いや何?お前が勝手に海入ったんだよ?
俺はずっとさみぃって言ってたんだが?
納得いかない顔のまま、俺は立ち止まった彼女に首を傾げて顎をしゃくる。何か言いたいことがあるなら言え?
「そんなに寒いならもう帰ります?」
「…あ゛ー、いや、別に」
「無理しなくてよいですよ。和樹さんが優しいのは分かってますからね」
「おいやめろあやすな」
「あやすよりも愛してますけどね」
もうこいつ黙れってマジで。軽やかな足取りで俺の目の前まで来た彼女は、自分のマフラーをするすると外して俺の首に巻き付けた。さっきまで彼女が使っていたからか思いのほか温いそれを被せられて、されるがままになっている俺。結構な長さがあるから俺が使っても顔が埋まるくらいの仕上がりになった。
おー大分マシになったわ、顔面直出来る風がないだけでここまで違うのか。
思わずこの文明の利器に関心して温まっていると、急に両手を取られてはーっと息を吹きかけられる。おーなんたる古典的な方法。でもそれじゃあ一瞬しか温まんないんだよな。
少し自分の下にある彼女の顔を見ればその鼻頭も少しだけ赤くなっていた。
それに食らいつくように口を開けて頬を掴めば、肌から直にじんわりと熱が伝わってくる。お、これはいい暖になるわ。
「わぶ、ぅ、は、なは止めましょ!口にしまっ」
「ん」
「…これでいいだろ、じゃないんですよ」
「なんだよいいだろ」
「こーいうのはもっとムードとか大事に、」
続く言葉を飲み干すように腰ごと支えて彼女の口に食いついた。初めは抵抗するように腕をバタバタとやったり突っ張ろうとして失敗していたが、俺が宥める様に首筋を撫でてやればゆっくりと脱力していく彼女。はいはい素直でよろしい。

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眞宮(プロフ) - 鴨メープルさん» 承知しました!精一杯書いてみます💪 (1月16日 18時) (レス) id: e3e5d0ba91 (このIDを非表示/違反報告)
鴨メープル(プロフ) - んん〜…お任せでもいいですか?あまり慣れて無くて…甘め…?に、していただきたいな〜と、ふんわり思っては居るんですけどうまく言語化できなくて…すみません💦 (1月16日 17時) (レス) id: e7d43eb7fc (このIDを非表示/違反報告)
眞宮(プロフ) - 鴨メープルさん» ありがとうございます!初めて書くのでお気に召すか分かりませんが頑張ってみます!お話の傾向とかご希望ありますか? (1月16日 14時) (レス) id: e3e5d0ba91 (このIDを非表示/違反報告)
鴨メープル(プロフ) - はじめまして!大好きです!!私の寿命が長くなりました!ありがとうございます!!リクエストなのですが、リンダカラーさんのdenさんお願いできますか…?1作目のdenさんも最高でした…!!よろしくお願いします! (1月16日 8時) (レス) id: e7d43eb7fc (このIDを非表示/違反報告)
眞宮(プロフ) - いたうさん» こちらこそありがとうございます☺️ふんわり浮かんだネタをただ吐き出しているだけですが、またやりたいシチュエーションが浮かんだら書いてみようとおもいます!出会ってくださりありがとうございます! (12月30日 22時) (レス) id: e3e5d0ba91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:眞宮 | 作成日時:2024年12月28日 23時