5話 ページ6
「A、音楽のセンスはあるのに、ゲームのセンスはないんだな」
キヨさんは録画の停止ボタンを押して、マイクも電源を切った。腹筋いてえわ、と彼はお腹を抑える。
「うう、笑うなら笑ってください」
ゲームオーバー、の文字が大きく書かれたテレビ画面を見て、肩を落とした。
さっきとは違うゲームをやって、今撃沈したところである。
あの、誰もが遊んだことのあるマリオのゲームでも、私はダメだった。
「見るからに落ち込んでるな」
「……だってこんなに上手くいかないなんて思わないじゃないですか」
ソファーで体育座りをして、縮こまる。
キヨさんはその様子を見て優しい笑みを浮かべた。
「そういや、ゲームもまともにしたことなかったって言ってたしな」
「だって、白黒のゲーム以外は見てても面白くないですし」
「そうだよなぁ」
ゲームに触れる機会がなかった、というわけではない。
しかし、色が見えない私が、一緒にゲームをして、ボロが出るのが嫌だったので、避けてきた。
こうやってゲームをするようになったのは、色が増えてからなのと、キヨさんに誘われてからなので、本当に最近なのだ。
「……色がなくても、面白いゲームはあるぞ」
と、初めてのお泊まりの時に、ノベルゲームをたくさん教えてくれたキヨさんのおかげで、今はすっかり虜になっているが。
ちなみにそのお泊まりの時は、夜更かしをしてやりこんでしまった。
なんて、ちょっと前のことを考えていると、キヨさんが目の前まで来てるのに気づかなかった。
あ、と思って小さく開いた私の口を、彼は自分のもので塞いだ。
「ん……っ」
「……舌、出せよ」
「ふ、ッ……ぁ」
「……えろ、」
「い、わないで、ぇ…、!」
きゅう、と体の奥があつくなった。ぬるりと入ってくる舌が熱い。歯をべろりと舐められて、力が抜けた。
キスしてくるキヨさんは、いつもより声が低くて、ゆっくりだ。
ちゅ、と私の舌を舐めてくる動きが、頭の中を真っ白にさせる。
ほんの数秒だったが、私にとっては果てしなく長かった。口の中を堪能して、満足したのか、彼はようやく解放してくれた。
「いきなり、は、だめですよ」
「お前がぼーっとしてるのが悪い」
力が抜けて、キヨさんの胸に顔を預けた。
キヨさんはべろりと自分の唇を舐めていた。
そして、うげ、と苦い顔をした。
「……まだ珈琲の味したわ」
「もう!」
ぽかりと胸を叩くが、彼は辞める気がないのだろう。
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りんご(プロフ) - ちょこれえとさん» すみません、返信遅くなりました。好きになったと言って頂けて嬉しいです。これからも自分のペースで頑張っていきます! (2020年3月6日 13時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれえと(プロフ) - めっちゃ面白いです!キヨのこともっと好きになれました! これからも頑張ってください!! (2020年3月3日 13時) (レス) id: cdd2774812 (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - みんさん» ありがとうございます!1番好きと言っていただけて嬉しいです。自分のペースで頑張らせていただきますので、これからもよろしくおねがいします! (2020年1月31日 23時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
みん(プロフ) - はじめまして!いつも拝見させていただいています!たくさんあるキヨのお話の中で一番好きです(^^)vりんご様のペースで頑張ってください。陰ながら応援してます! (2020年1月31日 18時) (レス) id: c336b5de5e (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - なおさん» 初めてのコメントをいただけて嬉しいです!年齢制限の方は別サイトになると思いますが、前向きに考えますね。ありがとうございます。 (2019年12月13日 19時) (レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんご | 作成日時:2019年12月10日 14時