23話 ページ23
うちの音大は、大きい上に、不思議なオブジェがあるので、そこそこ有名である。
だから、その不思議なオブジェのある正門で待ってろよ、と言われても迷うことは無いのだ。
無いのだが。
｢よっ｣
｢早すぎませんか？！｣
5分程で、ぶんとエンジン音がして、昨日と同じ車で現れたのはキヨさん。
あまりにも早すぎるのに、普通に窓を開けて話しかけてきたので、思わず突っ込んでしまった。
｢あんまり大きな声出すな！｣
マスクと眼鏡(正直ちょっと似合ってなくて面白い)をつけてるキヨさんは、周りを見ている。私は彼の素性を知っているのであ、と口を抑える。
この大学は夜遅くなると人が減るので、正門前に誰かに見られることはないとは思うけど、油断していたので、素直に謝った。
｢すみません｣
｢ま、いいや。早く乗れよ｣
｢はい｣
後部座席のドアを開けて、座った。
車の中は暖かった。
｢お前、この後予定は？｣
すぐに車を発信させたキヨさんは、私にそう聞いてきた。
｢何も無いですよ。家族はみんな今日遅くて、ひとりでご飯何食べようかなって思ってました｣
と同時に、タクシーが来なくて途方に暮れていたところから開放されたせいなのか、練習をずっとしていたからなのか。
ぐう、とお腹から大きな音がなった。
｢………はは｣
｢わ、笑わないでください！｣
穴があったら入りたいとはこの事だ。でも何も食べないでピアノを引き続けたのだから仕方ない、とお腹を抑えた。
｢じゃ、今日も行くか｣
｢えっ｣
｢えってなんだよ。飯行くぞ｣
✱
来たのは普通の居酒屋である。よくあるチェーン店で、焼き鳥のいい匂いがする。
｢確か成人だもんな、お酒飲んでもいーよ｣
2人で行くと個室が空いてたのか、すぐに店員さんに案内された。
と言っても、カーテンのようなもので仕切られているだけであったが、これがなかなか周りの人には見られなさそうである。
マスクと眼鏡を外したキヨさんは私にメニューを見せてくる。
｢私はいいですよ。キヨさんこそ……｣
｢俺に飲酒運転させるのかよ｣
｢あっ、ごめんなさい｣
間髪入れずに言われてしまい、彼の車で来たことを思い出す。何やってるんだ私。
｢うーん。今日はお酒控えておきます。とりあえずオレンジジュースで｣
｢あ、そう。俺は緑茶かな〜。とりあえず飲み物だけ頼んで、あとは適当に決めるか｣
ぴんぽん、とすぐにキヨさんはボタンを押した。
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りんご(プロフ) - ちぃさん» コメントありがとうございます。かっこいいと言っていただけて嬉しいです。ここ最近リアルなどが忙しいので、更新に波があると思いますが、長い目で見ていただけると幸いです！ (2019年11月21日 18時) (
レス) id: 72494e54b9 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - 7話まで一気に読ませていただきました！キヨくんかっこいいです。続きが楽しみです。無理しない程度に頑張ってくださいね！ (2019年11月21日 9時) (レス) id: bc58f84b7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りんご | 作成日時：2019年11月10日 20時
