花 ページ1
「そう、そうなんだ、伏黒恵、くん」
「はい、恵“くん”です」
自分よりいくらか年上の彼女に、伏黒はなるべく動かないようにして話した。
今回の任務で初めて会うであろう彼女は細い身体に長い髪をした女性だった。
見るからに不健康そうなので、一瞬強い、と言われても違和感しか感じなかった。
先輩…この3年は一級術師、東堂と同じである、が強そうには見えない。
彼女は目元を暫く押さえた後、ゆっくり瞼を上げ、挨拶した。
「…禪院の血?」
「はぁ、まぁ」
そうか、というと彼女は声だけ覚えておくね、と言って歩き出した。
伏黒は彼女を追い抜かせそうなスピードで着いていき、腕を掴んでグッと引く。
「ちょっとアンタ、こっち、車は」
「あ、ああ、ごめんね」
彼女、幽谷Aは東京都立呪術高等専門学校3年の一級術師である。
彼女は有名な家柄の生まれではない。
彼女の血筋に呪術師はいない。
完全なイレギュラーであり、特級術師並の強さを追い抜かせそうな力持つが、彼女には縛りというのか、強い術式を使う反面、欠点があった。
幽谷Aは生まれつき物が、人がぐちゃぐちゃに見えた。
静止しているものは普通の人間が見るようにはっきりと見えるのだが、それが動くとぐちゃぐちゃに、輪郭が歪んでしまった。
うまく人が見えなかった。
なので彼女の記憶の両親は異様な形をしている。
しかし、幽谷Aは強かった。
対象の物を歪ませ、捻じり、この世から消すことができる。
威力は相手が自分より強ければ強い程、大きな攻撃を受ける。
対象はある程度絞れるのだが、1度人を傷つけたことがある。
中学時代、クラスの気の強い、少し承認欲求の強い少女に怯え、その少女に術式を発動させてしまった。
腕はありえない方に捻じれ、彼女はとうとう家族に縁を切られた。
それからは人との付き合いを苦手としている。
そんな彼女は伏黒と本日任務を行う。
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