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ラウンド10☆一期視点☆ ページ11

襖の閉まる乾いた音の後に、遠ざかって行く足音。
刀剣男士達はそれを黙って聞いていた。
加州はAが出て行った方を眺めている大和守に、溜息を吐きながら言った。


「…安定…中々にキツいこと言うよな、おまえ」

「しょうがないだろ、バレそうだったんだから。でも上手いこと誤魔化せたでしょ」


大和守の返答に、乱は気まずそうに床を見る。
そんな乱の頭に手をぽんぽんと乗せながら、一期は真剣な顔付きで言った。


「あれは一体、何だったのでしょうか」

「さあねー…」


先程の光景。


一期は確実にAの首を落とした筈だった。
Aの首と胴体を完全に切断し、敷き布団も一緒に斬れていた。


しかし。


その切断面は、刀を抜いた瞬間に、うなじの方から徐々に消えていったのである。
首に引かれた紅色の線があっという間に消滅してゆく。
その時に誰かがぽつりと呟いた、
『化け物だ』
の一言は、あながち間違っていないのかもしれない。


「あれが、霊力の力ってやつなのかな?」

「いや…前の主は傷を負っても、あそこまでの治癒能力は無かった筈」

「そもそもあの現象に自覚はあるのか?」


ざわつく刀剣男士達に、加州は一旦落ち着く様に言った。


「はいはい、ストップ。こんなの話し合いじゃ解決しないでしょ。それは置いといて…やっぱりあれは可哀想だと思わない?死に際にあんなこと言われちゃって」


先程の主に対する態度。
この本丸にやってきた初日で「お前の事が嫌いだ」なんて言われたら傷付くに決まっているだろう。
大和守も人差し指を唇に当てて、うーん、と唸る。


「まあそうだけどさ…清光、もう余計な感情は持たない方が良いんじゃない?遅いんだよ、今更」


拾った仔猫に名前を付けると、手放し難くなってしまう。それと同じ様に、この審神者に同情してしまえばきっと殺し難くなってしまう。


「…」


加州は押し黙って、俯いた。


「ま、殺すって言ってもこんな風に再生しちゃうなら、努力しても意味なんて無いよ。こんのすけに報告してさっさと諦め…ちょっと、清光!」


大和守の言葉に耐え切れなくなったのだろうか。
加州は先程のAと同じ様に突然立ち上がって部屋から出て行った。

しかし、そんな加州の口の端はひっそりと、僅かに上がっていた。

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設定タグ:刀剣乱舞 , とうらぶ , 女審神者   
作品ジャンル:アニメ
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そると(プロフ) - ナツカさん» 一応この物語は完結したら少しいじってpixivの方にも載せたいと思っております!最後になってしまいましたが、これからも楽しく、張り切って書かせて頂きますのでよろしくお願いします♪ (2017年10月8日 23時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - ナツカさん» うわああああこんなに褒めて頂けるとは…(´ノω;`)ウレシイ…!!!大体の結末は考えていますが、自分は気分屋なので今とはガラッと変わるかもしれませんね( ˇωˇ )あと現在はもう受験を終えて高校一年生やってます…紛らわしくて申し訳ありません(汗)→ (2017年10月8日 23時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - 長文、大変上からの無礼な感想誠に失礼いたしました。ただ、是非完結まで追いたいです。占ツクをやって3年近くたちますが、1番と言っていい程楽しめる作品です。勉強との両立、大変だと思われますが、ご自愛のもと、どうかこの素晴らしい作品を書き上げてください!!! (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - 先が読めなくて、主人公と刀剣がどう和解するのか、はたまたバッドエンドなのか、予想がつかず妄想が膨らみ大変ワクワクします。本当に、もっと評価されるべきです、何故HIT数がこんなに少ない……! 正直占ツクよりも、pixivなど年齢層の高い場所で受ける作品かもです (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)
ナツカ(プロフ) - ギャグも、キャラをよく理解しかつ自分の中でキャラを動かせてるのだと思います。違和感なく楽しめます。受験生ということでしたが、高校3年生ですか? その年でここまで書けるのは、脱帽、尊敬に尽きます。結末までの構想は練ってあるのですか? 続きが気になります (2017年10月8日 22時) (レス) id: 0606ce557e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:そると | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年5月6日 18時

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