ひとりの兄 ページ3
《はいはい 運び屋戸岳。Aちゃん?おひさー》
『お久しぶりです。今依頼大丈夫ですか?』
《今?カツ丼食ってんだけど、元取ってくれるなら》
『分かりました、報酬の話は後でお願いします。東京都X-7区006-8番の廃ビル前で待っている轟兄妹をここまで運んでもらえますか』
了解、と答えた戸岳さんは通話を終了する。
そのあと惠さんに報告すると惠さんも通話を終える。
『……惠、さん』
「大丈夫。夕日の人柄は分かってるつもりだよ」
さっき怒鳴ってたし、かなりビクビク尋ねたのだけれど。
惠さんは普段通りだった。
「新人ちゃん分かりやすすぎ」
『惠さんのオンオフが激しすぎなんです!』
「はいはい」
本当にいつも通り、私をいじっては勝手にツボに入って肩を揺らしている。
…なんだかすごくイラっとする。
「新人ちゃん、あとちょっとで着くみたいだから下で待機しててくれる?」
『…惠さんは?』
「真夏に連絡して、今後の相談だね。込み入った話もあるから」
恐らく、それが一番の理由だろう。
私はおとなしく、玄関を出て階段を下りる。
“生きるため、夕日たちは正染にいる”
今日、聞いた言葉。
…思えば不思議だ。
今日彼女たちのことを知って、彼女たちの心に触れて、私はここまで彼女たちに近づこうとしている。
外へ出て、辺りを見回す。
車が止まるのはこの辺りだろうか、と思って道路に近い道の端のベンチに座る。
そのまま、携帯を開く。
特に調べることもなかったけれど 私はなんとなく〈ネメシス〉と検索をかけた。
「興味あります?ネメシスのこと」
『………え、』
にこりと笑ったその笑顔には、見覚えがある。
彼が___、ゆづが、兄貴と呼んだ男。
…銃がない。
武器類、何も持っていない。
咄嗟にスマホの画面を通話の準備画面にするが、
「駄目ですよ、逃げたら」
携帯が取り上げられる。
…西宮は、ニコリと読めない笑みを浮かべる。
『……』
「武器がないのは、分かりますよね?」
私のことかと思ったけれど。
…確かに西宮の手のどこにも、銃やナイフはない。
それを忍ばせられるスペースも見えない。
『…何が、目的』
「うーん…特には?」
あっさりと言われ、返す言葉をなくしてしまう。
この男の相手をしても意味がない。けれど、ここを離れられない。
…どうすれば、いい。
「単純な話ですけどね。僕に聞きたいことでもあるかと思いまして」
『……!』
埒が明かない。
…そう思い口を開いた。
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リナ@オリ垢(プロフ) - 星雲さん» コメントありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しい言葉です…!頑張ります! (2019年3月11日 13時) (レス) id: 4ca9bb93a1 (このIDを非表示/違反報告)
星雲 - すごく面白い!私は真夏さんが好きです!イラストも私の好みです♪更新頑張ってくださいね! (2019年3月11日 8時) (レス) id: 856336a373 (このIDを非表示/違反報告)
リナ@オリ垢(プロフ) - 如月 唯奈さん» コメントありがとうございます!はい、頑張ります! (2018年12月18日 20時) (レス) id: d33000d880 (このIDを非表示/違反報告)
如月 唯奈 - リナさん、初めましてっ!( ☆∀☆)面白かったです!私も殺し屋を主人公とした小説を作っています。更新頑張ってくださいね! (2018年12月17日 1時) (レス) id: 0a57facb33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リナ@オリジナル小説垢 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2018年11月25日 11時