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才能 ページ28

「惠さんに選んでもらった銃、気に入ったのか」

『確かに使いやすいんだけどね。先週末は慌ただしかったし、銃を買い替えるのは夏休み入ってからだねって話してたんだよ』

「ふぅん」


興味なさげに答え、改札口にカードをあてる。
私も同じくカードをあて、改札を抜けたところで電車に乗った。

『………ねぇ、ゆづ』

「ん」

『私、銃を扱うのが上手い…とかだったりする?』

ほんの少し、驚いたような顔をする。
私は彼の返事を待った。

「それは誰から聞いて?」

『このあいだの任務の前に試し撃ちして、的の真ん中に当たったんだよね。その時に惠さんにマグレじゃ無いよって』

時間帯からして、通勤ラッシュであるため、ドア付近で立ったままの私たち。
普段はもう少し遅い時間に行っているため、通勤時間には当たらないのだが。


「…満江真里奈の事件の時、お前の銃弾はあの女の脳天を貫いた。その銃弾は脳幹に当たった。…つまり、ほんの数分でアイツは息絶えた」

『……!』

「市民に配られている銃はそう殺傷能力の高いものじゃ無い。足を狙って動きを封じるとか、いわゆる自衛のための物だ。それでも脳幹をピンポイントで当てるってのはそれなりの訓練か才能がいるんだよ」


…複雑な気持ちになった。
それが誇れるものである気はしなくて。
この世界では必要な才能かもしれないが、自慢できるようなものでは無い。


「…お前は、凄いと思う」

『………え、』

「高い銃を使えば、それなりに人は殺せる。悪を断罪することは容易だ。…でもおまえは、そんなものを使わなくても、いかなる状況下でもそれができる。それに向き合うことが出来る。」


物は言いよう。
そんなもの、あったところでやはり意味はない。
だけど、私の正義を貫けるなら。


私の正義で誰かを救えるのなら。



『……今日の合同授業、頑張ろうね。』




そんな綺麗事を胸に。

…誰かを救える一方で誰かを不幸にしていることも分かっているはずなのに。
気づかないふりをしている私は、きっと酷い人間なのだろう。

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作者名:リナ@オリジナル小説垢 | 作者ホームページ:http://uranai  
作成日時:2018年7月15日 12時

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