私のヒーロー ページ24
いつの間にか。
私は蹲っていた。腹部から熱いものがどくどくと流れ出し、それを止める術すらなく、ただ男を睨む。
これじゃあ あの時と、同じじゃ無いか。
けじめをつけるために、この戦いへ挑んだと言うのに。
弱い自分が憎らしい。私はあの時と何も変わっていない。
…耳に はめた通信機から音声が流れる。
《……真夏。いい加減にしてくれる。そっちの勝手な行動で迷惑かけられても困る》
《かけないよ。すぐ終わる。》
《そんな冷静さの欠片もない状態で行っても返り討ちに合うだけだって言ってるんだけど!》
テーブルを叩く音。
…夏。惠くんに迷惑かけたらダメじゃない。
《……大丈夫。安心してよ。______…俺は至って冷静だ》
彼の声には、怒りが宿っている。
どうしてかなんて、考えなくてもわかる。
私がやられてしまったから。
瀬名に冷静に対応していれば間違いなく拘束できたものを、私はそれが出来なかった。
だから今ここで情けなく床に倒れている。
「…な、つ、」
向こうへ届くのかもわからない。
だけど言わずにはいられなかった。
「なつは、……笑っ、…て、て…。……なつ、は……わ…たしの、ヒーロー……」
「憎しみ、に……溺れない、で……」
ああ、何故だろう。
涙が溢れて止まらない。
私が……彼を殺してしまったのだろうか。
『透さん!!』
どこか遠いところから、Aちゃんの声がした。
だけどその声に手を伸ばす前に、私は意識を失った。
だけどどこか近くで_____…ウサギのピンが落ちる音が、たしかに聞こえた。
*****
「……応急処置、終わったね」
『はい。……真夏さんもゆづも、大丈夫でしょうか』
あれから。
倒れ込んだ透さんを回収して、裏口から抜け出し、待機の車に乗ったのは数分前の話。
私が野田を取り逃がしたせいで、どちらかの援護に行っている可能性もある。
そうなると状況的にかなり不利になるだろう。
「監視カメラから見る限り大丈夫。音声は今拾いにくいけど…たぶん、もう直ぐ終わるよ」
…真夏さんは、私が思っている百倍は強いのだろう。
いつも笑顔で掴み所がない、子供みたいな人。
透さんが瀬名にやられて、抑えていたものが弾けてしまった。
あの人は、敵に回しちゃダメな人だ。
.
「…あ」
『何かありましたか!?』
パソコンを見ていた惠さんが呟く。
「やっぱ手強いね。結弦の方も逃げられた」
そう、上手くはいかないものだと痛感した。
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作者名:リナ@オリジナル小説垢 | 作者ホームページ:http://uranai
作成日時:2018年7月15日 12時