雨の物語。裏 ページ18
「貴方ね。夏を狙っているのは」
裏社会では名高いパーティ会場に、その男はいた。
確か名前は瀬名健(セナ タケシ)。
「お嬢さん。一体何の用かね。」
ニコニコと笑っているのは、余裕の証だった。
私はその男に銃口を向ける。
「…！」
周辺のガードマンが私に銃を向けた。
…が、それを阻止する瀬名。
瀬名は再び口を開いた。
「私の知っている殺し屋によく似ているよ。無駄口は叩かず、無情に人を殺す＿＿＿…実に邪魔だ」
それが、何よりの証拠だった。
夏を狙う理由。それが知りたくて、もしかしたら分かり合えるかもしれない、だなんて。
やっぱり私は楽観視し過ぎていたみたいで。
この状況下、私が引き金を引いたところでこの男の急所に当たる確率はかなり低い。
それに、もしかすると…いや、確実に私が蜂の巣にされるのが先だ。
男がガードマンの前に出している手を見る。
…あれが下がれば、私は＿＿＿＿＿。
「夏に……関わらないで…」
そして漏れた言葉は、弱々しい言葉だった。
あの人を守るために、私は無茶ばかりしたのに。
“夏がするなら私もするわ。”
…独りに、なりたくないから。
“言うこと聞けって言ってんだろ！！”
…きっと貴方も、独りになりたくなかった。
いつの日か言い合った言葉を思い出す。
相手を思いやっているようで、結局お互い自分のことばかり考えていた。
だけどそれでも、それは間違いじゃなかったって思う。
あなたが死ぬことは、何より寂しいから。
…自分勝手でごめんね、夏。
「…その頼みは、少し聞けないなぁ」
奴の余裕さを欠くことを、私には出来なかった。
瀬名が手を下げた瞬間、男達の銃の引き金が引かれた。
私の心臓を貫く銃弾は…無かった。
…私は生かされたんだ。
この狭く、息苦しい世界で。
「車を出してくれ、次の仕事へ向かう」
「はい」
まるで私の存在はなかったように去っていく後ろ姿を薄目で見ながら、結局脳裏から離れないのは私が大好きなあの人の笑顔だった。
雨粒が肌に打ち付ける。
その微かな痛みが、私の心を落ち着かせる唯一の感覚だった。
＿＿＿…君が最後に笑ったのは、いつだったろう。
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作者名：リナ@オリジナル小説垢 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2018年7月15日 12時
