巻き込み ページ14
7月28日(土)
「Aちゃん、この間ので風邪ひいてない？体調とかは？」
この間。
そういえば、部長と手当てをした時は雨が降っていたと思い出す。
夜からの急な雨で、手当てを行ったのは室内だからほとんど雨には濡れていなかったけれど。
「良かった。今回の任務、かなり危険なのよね」
「というのは」
「ええと…多分だけど、ネメシスが関係してる」
関係する資料を手に、説明を始める透さん。
私も心して聞く。
「明日起こるとされている事件の主犯格は藍田岬と、野田真昼。近くの高級ホテルを襲撃するとのことね」
「情報源は」
「信頼の警察。正局さんよ」
…といえば、小鳥遊さんだろう。
たぶん、信頼はできるはず。
「でね。彼らに便乗してもう一つ裏の一派が動きそう。これは真夏予想。…国会議員の瀬名健って、知ってるわよね」
『結構色々話題になってる人ですよね。不正とかなんとか』
「ニュース見るようになったんだな」
『……おかげさまで』
小馬鹿にするように言ったゆづ。
ここに来る前は一切ニュースには興味はなかった。
そういえばあの日の朝見たニュースも瀬名健関連だったような気がする。
「お察しの通りが彼が手を引いてる。これは私も自分の目で見たから間違いない」
「さっきから…いや、もうずっと前から思ってたんだけどさ」
「…なに？」
ペンを回していた惠さんが口を挟んだ。
いつもと違った、少し冷たく鋭い瞳で。
「俺と、結弦と新人ちゃん。君らの何に巻き込まれようとしてんの？」
惠さんがニコリと笑った。
それを見て透さんが眉を下げる。
『え、あの、惠さん』
「鈍感すぎんだろ。透さんがソワソワしてんの見て分からねーの？」
『あー…た、たしかに…？』
二人のため息が深く重なった。
…ごめんなさい。
「ごめんね。けど言おうと思ってたわ。だから聞いて欲しい。私と真夏の、学生時代からの話」
そんなに昔から二人は一緒にいたのか。
息がぴったりな理由も納得だ。
＊＊＊＊＊
＿＿＿＿＿＿思えば、あの日も雨だった。
身を打つような、激しい雨。
ひゅうひゅうと喉奥から空気が抜けるだけで、声は全く出ない。
そこに確かに彼はいて。
涙を浮かべて、私の方を揺さぶった。
私の大好きな、私のヒーロー。
＊＊＊＊＊
正局→正染関連管理局の省略です。
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作者名：リナ@オリジナル小説垢 | 作者ホームページ：http://uranai
作成日時：2018年7月15日 12時
