花になりたい彼女 (ページ11)

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9輪ページ11

その日はAの横で眠りにつくことにした

さぁ、寝るかと隣に並んだ途端に眉間にシワ寄せるから笑ったわ

頭を撫でてやると表情が少し和らいだ気がする

そういや最近ゲンの野郎倉庫行き来してやがったよーな…

Aに被せてある布を少し捲れば少し薄くなったであろう無数の傷

…そういうことかよ

こりゃ目覚めたらしっかりお説教だな

『ん…ぅ』

目を開けると見慣れない天井
左を見ても土器、右を見ても土器
倉庫…なのかな？

体を起こすと全身が痛い
けど手当されてる

『誰が……あ、』

倒れる寸前で見たあの人
左右で頭の色が違ったあの人だ

悪いことしたな…血まみれで倒れ込んじゃって

『お礼と謝罪しなきゃ…』

立ち上がろうとすると目の前の扉が開いてスイカ？の被り物を被った不思議な女の子と目が合った…気がした

「お、起きたんだよーーーー！！！」

『え』

目が合ったと思ったら直ぐに外に行ってしまった

私も取り敢えず外に出よう

倉庫の扉を開けて外へ出るとたくさんの人が詰め寄ってきた

「わぁぁ！！あのねとっても綺麗な人だよ！！」

「その怪我大丈夫なの！？」

「名前なんて言うの！？」

え、誰この個性的な人達…！？
聖徳太子じゃないから一人一人お願いします…！

「A」

受け答えに困っていると後ろから酷く落ち着く声がした

瞬間、心臓を握られたかのようにキューっと苦しくなる

目を見開いたままゆっくり振り向くと、ずっと見たかった真紅と目が合った

ずっと、ずっと会いたかった人がそこに確かに存在している、生きている

鼻の奥がツンとする

目の前が霞む

唇が震える

溢れ出てきて止まらない涙を両手で拭いながら一歩ずつゆっくり、確実に足を進める

あと数歩、あと数歩で

両腕を広げている彼が少し微笑んだ気がした

胸にもたれ掛かると、あの日みたいにギューっと抱きしめてくれる

それでもまだ距離がある気がして、私も背中に手を回し顔を押し付けた

傷の痛みなんてもの今はどうでも良くなるほど必死に

今はただこの、太陽みたいに暖かい香りで満たされていたかった

額をグリグリ押し付けるといつものように頭を撫でてくれる

『ただいま』

そんな彼にとびっきりの笑顔で言ってやった