36【真山】 ページ46
.
言いたくない。
言えない。
言わないって決めた。
でも、今やもう誰も得をしない。
自分を追い詰めるのが得意なこの人たちは、もう崖のぎりぎりに居る。
私が片棒を担いでしまったのだ。
………言うしかない。
「……ここからは、私の謝罪です。
謝っても、許してもらえるなんて思ってないけど…
でも、言い訳はさせてください。
決して利己的な理由で、この嘘をつくに至った訳ではないことを分かってほしい。
これは相談して決めたことなんです。
長い時間を掛けて、二人で。
あなたを傷つけまいとした、その複雑な感情を、私も尊重せざるを得なかったんです」
.
.
.
Aちゃんは、お母様の亡くなられたショックから
長らく立ち直れずにいた。
いつもの通りになろうと、一生懸命無理をして目の奥から光が消えて、でも誰もどうしようもできなかった。
あなたは大丈夫と繰り返すばかり。
そんなAちゃんを救ったのが、あのひとだった。
他のどの人が慰めても励ましても駄目だったAちゃんを、転落事故のその日まで何とか生きながらえさせた。
あのひとが支えなければ、きっとAちゃんはもっと早く終わってしまっただろう。
この二人は辛い現実を飲み込んで、グループの為、応援する人の為に仕事をし続けた。
多分、普通のカップルのようなことはあまり
ふたりの間には存在していなかったんだと思う。
それでもAちゃんがその関係を大切にしていけたのは安田さんの存在が大きかったようだ。
Aちゃんと安田さんはずっと仲が良かった。
それはこうなった後も変わらなかったことで。
Aちゃんは、安田さんに二人のことを相談していた。
事情を知らない人から見れば、安田さんとの仲が強く見えただろうが、私はこの二人のことを、世界で唯一知っていたのでただただ、器用なはずのAちゃんの不器用さを、微笑ましく感じただけであった。
とはいえ、具体的なことは私は知らないけれど、あなたが言っていた言葉は、決して忘れていない。
「私は、あの人のこと、まあ、好きやんか。
多分やけどな、あの人を好きで居ることが、私が私自身を好きで居るってことやと思うねんな」
Aちゃんのソロの「恋情」。
あれは安田さんと作った、安田さんとの曲じゃない。
あれは、安田さんと作った、Aちゃんの恋の歌だ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 163人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「紅一点」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆうみ(プロフ) - みきさん» みきさん、コメントありがとうございます。ラストまでもう少し、お付き合いください！ (2020年1月20日 11時) (
レス) id: 23afaa0b1c (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 更新ありがとうございます！まさか…章ちゃんではない可能性が…？！ハラハラドキドキしながら続きを楽しみにしています。 (2020年1月19日 5時) (レス) id: d5b4f7ed9e (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 初めまして。どの作品も読ませて頂いてます。まさかお相手が章ちゃんだったとは(*/∀＼*) 章ちゃん大好きなので嬉しいです！記憶も戻ってハッピーエンドになりますように。このお話の一話からもう一度読み返します！ (2020年1月8日 19時) (レス) id: d5b4f7ed9e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆうみ | 作成日時：2019年9月27日 5時
