34【過去】 ページ44
.
葬儀の後、呆然と、私は東京に帰ってきた。
もっと律の傍に居てあげたかったけれど、仕事に関わる全てにとって、私的なことは全くもって関係がなかった。
律は、一人であの家で暮らすのだ。
東京に連れて帰るつもりだったけれど、学校のことがあるし、と律に断られた。
迷惑を掛けまいとする私に、よく似ていると思った。
休みは最低限に抑えた。
休むわけには行かなかった。
たくさんの平凡な毎日と同じように局に向かう。
助手席の真山さんは、何も声を掛けなかった。
その心遣いも気が付けなかった。
廊下で挨拶する人々、
誰一人としてこの胸中を知らない。
だからこそ、いつもの愛想笑いで誤魔化せた。
でも楽屋にいる、その人たちだけには隠せなかった。
扉を開けた時、巧く言葉を出せなかった。
おはよう、も違う気がした。
迷惑おかけしまして、なんて出なかった。
しんと静まった楽屋に私が入ると、全員居た。
扉を閉めても中へ進めなくて、後ろに立つ真山さんの悲しそうな顔は見なくても分かった。
「竹本、おかえり」
しっかり私の眼を捉えて、放たれたその言葉が、私のつめたい心に突き刺さった。
すばるくんだった。
私はその時初めて泣いた。
涙が滝ほど流れて、子供みたいに泣き崩れてしまった。
真山さんとみんなが私に駆け寄って、肩を抱いてくれた。
その時私は誓ったのだ。
見たこともない私の神様に。
私を愛してくれるこの人たちの為に、もうこの世に存在しない人の為に、この場所に居続けなくてはならないと。
どんな無理をしても、私はこの人たちと一緒に居たい。
居なくてはならない。
それが私の生きる意味であり、アイデンティティだ。
私は、私と母の「親子の時間」を潰してまで、このライトを浴びる茨の道を選び、進んできた。
それは「妹との日々」でもあり、「一人の人間としての人生」でもあった。
今更、その棘によって、穴の空いてしまった幸せに、余所見していてはいけないのだ。
私は、この日以来、このグループの為に生きると決意した。
それは加入よりも堅い決意だった。
でもそうすると、上手く笑えなくなった。
あんなに好きだったのに、食欲も失せた。
気味の悪い吐息にも、妙な熱を持った指にも何も感じなくなった。
中傷はやっぱり傷ついたけれど、何とも思わない顔がまた少し、上手くなった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 163人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆうみ(プロフ) - みきさん» みきさん、コメントありがとうございます。ラストまでもう少し、お付き合いください！ (2020年1月20日 11時) (
レス) id: 23afaa0b1c (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 更新ありがとうございます！まさか…章ちゃんではない可能性が…？！ハラハラドキドキしながら続きを楽しみにしています。 (2020年1月19日 5時) (レス) id: d5b4f7ed9e (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - 初めまして。どの作品も読ませて頂いてます。まさかお相手が章ちゃんだったとは(*/∀＼*) 章ちゃん大好きなので嬉しいです！記憶も戻ってハッピーエンドになりますように。このお話の一話からもう一度読み返します！ (2020年1月8日 19時) (レス) id: d5b4f7ed9e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆうみ | 作成日時：2019年9月27日 5時
