ep.23 ページ24
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私は天国へ行けると思う。
清らかな身体のまま処女の花嫁として、レースのヴェールをつけて白い階段を上がっていく。
あ、無理や。
私、人殺しやったわ。アーセナルも一緒や。
やったら、地獄の底まで一緒に転がり堕ちて欲しい。
何処までも付いていくから、しつこく付いていくから。
あなたの為に穢した手を、どうか取って欲しい。
あなたの香水の香りが私に移ってしまうくらいに、私の香水の香りがあなたに移ってしまうくらいに、今までのすべてを忘れさせてほしい。
そうすれば私は簡単な女やから、すぐにでもあの切符を破り捨てられる。
「アーセナル、」
「……なんや」
「もしあたしが……」
「…………」
「……いや、あの、………」
「………………」
「アーセナル、私のこと、どう思うてるん」
「…………」
「…」
「…………家族や。大事な家族や、セーラは。
皆がお前のことを大切に思うてる」
………私の首は、刎ねられた。
斬首台の真ん中で私は泣くこともできずに、刑を執行されてしまった。
こうして私は地獄に堕ちることすら、出来へんかった。
私が奪った命、私の奪われた感情、私が手にいれた地位、私の成れなかった立場。
どれもが遠く霞んで私の前を通り過ぎる。
この人の全てが憎かった。
この世を恨むように、この人が嫌いだ。
人間を蔑むように、この人を憂いた。
でも私には何も出来へんかった。
この人の全てが好きやから。
この世に希望を抱くように、この人を追いかけてきた。
人間を愛しく思うように、この人を受け入れてきた。
やからこそ、この人のモノに成られへんかった自分が、たった今死んだことが解ったのだ。
そして今居る場所が、天国やないことも。
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作者名：ゆうみ | 作成日時：2020年8月22日 11時
