【4】宮野さん(女)はえいとです【選択編】 (ページ14)

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⑬悲しみと切なさ知って【青】ページ14

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……セットの関係で、クランクアップ前の
最後のシーンは、喫茶店での一コマやった。

僕演じる依頼人・南の捜し物の捜査のために、小学校の入学式に、潜り込むことになった一同。

遥介(はるくん)の両親に扮する為、彼方(大倉)とれい(Aちゃん)が準備をするシーン。

用意が済んで、先に飛び出す遥介。

それを南が追って出ていく。

その後の残された二人が会話する。

『ちょっと待った!れい、それ…』

『何?大丈夫でしょ。スーツも着てるし、ストッキングも履いてるし、』

『化粧、やばいよ。そのアイシャドウ、』

『え?』

『ヤンママじゃん…。瞼真っ青じゃん』

『やりすぎ?』

『やりすぎ』

『もう、れいさあ…』

『ちょっと痛い!ごしごししないで!』

『直してあげる。普通青じゃないでしょ、ブラウンとかさ』

『何で彼方そんなん知ってるの』

『分かんないけど変なのは分かるの。はい、目瞑って。』

『…はあい』

朝の光が入る喫茶店で、椅子に座り、
その顎を少し上げて薬指でアイシャドウを塗る。

それだけのシーンといえばそれだけやのに、その横顔、背筋、額、瞼、あんまり出来すぎていて、
セットからはけ、モニターで確認していた僕の横に居たスタッフさんすら、小さな声で、『きれい』と呟いた。

……見ちゃいけないものを、見せられてるような気がした。

れい、と呼びかけているのに、A、と言っているような気がした。

気負うことない、この距離感を表す言葉として、僕は、演技が上手いね、とは言えなかった。

暖かくて信頼があって、儚くて切なくて、刹那的で、なのに永久に続くように、僕には見える。

いつかの4番目のキスは、帰ってくるんだろうか。

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