仕事_102 ページ6
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Aは山姥切に時折目配せをしながら、雪の少ないところを慎重に歩く。
ひのとが張った結界は不可視だ。いつ、どこから彼が現れるのかわからない。
『(瘴気が濃い……ここにいるのか…)』
一度立ち止まり、深呼吸する。
足を踏み出した、次の瞬間。
『＿＿っ！』
ひのと「ちぃっ！」
伸びてきたひのとの腕を、Aは間一髪左肩を引いて避ける。
あと少しで結界を越えるところだった。
山姥切が素早くひのとの腕を掴んだが、捻られて手から外れる。
数歩後退り、ひのとは怒号をあげた。
ひのと「どけ！＿＿風殺＿＿！」
『《＿＿＿
Aの言霊がひのとの術を粉砕する。
激しい突風が生じて雪が巻き上げられた。
至近距離で爆発を受けた山姥切は Aを後ろ手で庇いながら、片腕を
ひのとは忌々しげに舌打ちをして体勢を整えた。
ひのと「あと少しだったのに…」
にっかり「何がだい？」
心臓が撥ね上がる。
振り向きざまにひのとは手の甲で相手の顔を殴打しようとしたが、それは体を低くして避けられた。
にっかりは攻撃を避けながら、蹴りで足を刈ろうとする。しかしギリギリのところで飛びすさられ距離を置かれた。
に「Aに触れないでほしいな」
ひのと「黙れ！」
真っ直ぐに繰り出された拳を、にっかりは手のひらで流す。
腕を取られそうになったのを感じて、ひのとは腕を振り抜いた勢いのまま、相手の側頭部に回し蹴りをくらわせようとした。
だが、にっかりは軽く上体を反らして避ける。
そして姿勢を崩したひのとの腕を掴んだ、その時だった。
ひのと「お前、邪魔。失せろ」
一瞬で彼の間合いに入り、トンと胸を叩いた。
に「っ？！」
霊波を叩きつけられ、息ができないほどの衝撃が身を貫く。一拍遅れて、彼の身体がAたちの方へと飛ばされた。
山姥切「！」
山姥切は咄嗟にAを突き飛ばし、にっかりを受け止めようとする。しかしあまりの衝撃に彼自身も後方に飛ばされた。
『にっかり、山姥切！』
ひのと「よそ見だなんて、大した余裕だなぁ」
Aははっと振り返る。それと同時に首を掴まれた。
『っ…』
紅い瞳の奥に、仄白い炎が見える。
言霊を使えないAは、ただその瞳を見つめることしかできなかった。
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2018年12月16日 16時
