仕事_110 ページ14
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『っあ…』
瞠目したAは一気に蒼白になり、両手で口を押さえる。
自分のせいで、山姥切が。
逃げろと言われたことも忘れ、彼女は二人に向かって駆け出した。
山姥切「来るな！」
その声にはっと息を呑む。
ひのとは視線を滑らせた。布から覗く、苛烈に輝いた
貫通したのは首ではなく、咄嗟にかばった手の平。
己れの傷など意にも介さず、山姥切は渾身の力で筆架叉を折り砕いた。
小気味良い金属音を立て、蠱毒の筆架叉は真っ二つに砕ける。そのまま間髪入れずにひのとへ蹴りを繰り出した。
ひのと「ぐっ…」
彼の体が弧を描いて後方に飛ばされる。
離れた隙に山姥切は刺さったままの筆架叉を掴み、力任せに引き抜いた。
山「うﾞっ……！」
瞬間、想像を絶する痛みが駆け抜ける。
瞬く間に蠱毒が全身を回り、激痛が視界を真っ赤に染めた。
がくりと膝をつき、地面に倒れこむ。
『！やま＿＿「
山姥切に意識が向いていたAは隙を突かれ、ひのとの呪縛を真っ正面から受けた。
ひのとは飛ばされたもう一本の筆架叉を拾ってAに近づく。
ひのと「裏切ったのは、こいつらだ…俺は何もしてない」
『…お前がここの者達を痛めつけたのは事実だ』
ひのと「黙れっ！！！」
至近距離で筆架叉を振り払った。
切っ先の放つ
ひのと「俺は何もやってない…」
冷静さを失った瞳をAに向け、手にした武器を軽くひらめかした。
山「よせ…！」
Aは思わず目を閉じた。
なんて苦しそうな声だろう。ずるずると、何かを引きずるような音がする。
山姥切、もういい。無理しなくて、いいから。
そう言いたいのに、禍気が喉をふさいでその言葉すらも封じ込める。
ひのと「………」
ひのとは山姥切に近づくと、彼の傍に落ちている血濡れた筆架叉を拾い上げた。そして。
『やめ…ろ…！』
必死に押し出した制止の声も虚しく、折れた筆架叉が山姥切の足に向かって勢いよく降り下ろされる。
凄まじい絶叫が轟いた。
やがてそれも途切れて、低くうめきながら僅かにもがく気配だけが感じられる。
ひのとは立ち上がると、ゆらりとAに向き直った。
ひのと「これで心置きなく、あんたを殺せる」
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作者名：葛の葉 | 作成日時：2018年12月16日 16時
