第10話 ページ10
花柄のロングワンピースに着替えたA。
俺の後ろを付いて来るその表情は少し暗くて。
う「……A、こっち向いて。」
『ん…?』
ポスッ
『え、ぇ、渉くん…?』
驚いたように頭を抑えたAが俺を見上げる。
う「帽子があれば少しは人目が怖くないかなぁ、って。」
とりあえず俺が被ってたキャップを被せてみた。
顔小さいから目まで隠れちゃってるけど、それも可愛い。
『………ありがと、渉くん。』
少しだけ嬉しそうに笑った。
う「………いいえ。」
う「まずはベッドと机と…あー、あと本棚必要だよな!おっきいやつ!参考書たくさん置けるように!」
Aを連れて、まずは家具コーナーへ。
『…ふふ、渉くんのほうが楽しそう。』
う「えー何だよぉ。」
クスクス楽しそうに笑うAが、きゅ、と俺のシャツの裾を摘んだ。
『…はぐれちゃいそう、だから……。』
う「…うん、そのまま掴んでてよ。」
……ちょっと進歩したかな。
Aは木目のベッド、机、本棚、カラーボックスを選んだ。カーテンや布団、収納ケースなどのは薄いピンクを基調としたものが多くて、やっぱり高校生の女の子だなぁ、なんておじさんくさいこと考える。
う「あ、もうこんな時間。」
『本当だ。そろそろ13時。』
う「なんか途端にお腹空いてきちゃった。」
『ふふ。』
そのままフードコートへ。
う「何食べる?結構色んなものあるけど…。」
フードコートの案内板を見ながらAに問い掛ける。
『渉くんは?何か食べたいものとか。』
う「んー…」
……すると目につくのは、カフェの看板メニューであろうパンケーキの写真。
でもここはAの意見を尊重しないとな。
『…それじゃあ、ここのカフェでも良いですか?』
そう言って指差すのは……。
う「…本当にAがそこに行きたいの?俺に合わせてるとかじゃなくて?」
『何のこと?』
にっこり笑って、ほら行こう、と裾を引っ張る。
……優しい子なんだよ、昔から。
だから、Aが傷つくなんて絶対に許せないし、あってはいけない。
Aにとって優しい世界を、俺が見つけてあげられたら良いんだけどな。
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まなつ(プロフ) - コメント失礼します。ただ一人の私自身を思ってくれる、本当の私を見てくれる、そんな優しい誰かがすぐそばにいる、それを気付かせてくれる誰かがいる夢主ちゃんはとても幸せですね。素敵なお話をありがとうございます (2020年6月25日 23時) (レス) id: c0717d53d4 (このIDを非表示/違反報告)
ゲッティ - 奇遇、私も埼玉住んでる (2020年6月13日 18時) (レス) id: 0adc01732d (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - 心春さん» これは世界中で理不尽ないじめと戦う皆の話です。貴方の心に響いたのならきっと貴方も過去(現在かもしれませんが)経験がおありなのでしょう。「結局誰も助けてくれない、けれど何処かに助けてくれる大人は必ずいる」をテーマに書いておりますのでコメント嬉しいです。 (2020年5月26日 7時) (レス) id: 72c92659fa (このIDを非表示/違反報告)
心春 - 泣いてしまいました。夢主ちゃんの周りに素敵な方達がたくさん居て、読んでいてとてもあたたかくなりました。これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます。 (2020年5月26日 0時) (レス) id: dd23ca9c81 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - しおさん» ありがとうございます。「貴方にとって優しい世界が何処かにある」をテーマに書いておりますので伝わっていたのはとても嬉しいです。 (2020年5月24日 19時) (レス) id: 72c92659fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凛 | 作成日時:2019年8月6日 12時