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「見つけた伊野ちゃんっ!」
「うわ!?」
大ちゃんと教室に戻ってる途中、後ろから誰かに抱きつかれた。
声で誰なのかは予想ついてたけど、まさか抱きつかれるとは思ってなくて一瞬理解が遅れる。
ただ残念ながら俺にその人を受け止められる力も、踏ん張る力もなくて…。
「伊野ちゃん!?」
驚きながら俺の名前を呼ぶ大ちゃんの声を聞きながら、廊下へと打ち付けられる…。
はずだったのだが。
「おっと。…伊野ちゃん、大丈夫?」
「ち、ねん?」
俺に抱きついてきた人物―――知念侑李は重心を後ろに逸らせて着地、そのまま俺のことも元の位置へと戻したのだった。
とんでもない身体能力だな。
普通重心を操るなんてできないぞ…。
ああ、尚更知念が同じ軍団だったらいいのにと思ってしまう。
知念は2年D組。
山田とも大ちゃんとも俺とも違う。
人見知り故に友達が出来るか不安だったけど、今は上手くやれてるらしい。
特に岡本圭人…って言ったっけ。
何回か会ったことあるけど、弱気で泣き虫で…でも紳士的でジェントルマンだったな。
…俺のことを最初女子と勘違いして滅茶苦茶良い笑顔で“レディーファーストだよ”って言われたときは不覚にもキュンとした。
まあ、知念可愛いし…そりゃ自ずと人が寄ってくるよな。
「んで、どうしたの?」
「え?可愛い伊野ちゃんを見かけたから体がつい…。」
つまり用事はない、と。
「そういえば今回の企画…知念が提案したらしいじゃん。」
「うん、そうだよ。」
悪怯れる様子もなくサラッと告げる知念。
滅茶苦茶怒りたい気持ちもあるけど知念が可愛すぎて怒れないし、多分知念を怒ったら山田あたりが五月蝿い。
「なんでこんな企画提案したんだよ。」
「何でって…伊野ちゃんのためだよ?」
「…は?」
予想外すぎる言葉だった。
俺のため?
…どう考えても嫌がらせにしかならないだろ。
俺のためって言うなら無理だってわかってるけど、今すぐにでもその企画を白紙にしてくれ。
「…まあ、そのためには伊野ちゃん達が勝たないと意味ないんだけどね。でも手加減はしないから、頑張れ〜。」
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作者名:さくらもち | 作成日時:2017年8月14日 1時