♯ ページ34
in 2020
付き合い始めてからもう9年も経つ。長い間付き合って若さを失いつつある俺達だけど、互いを愛し続ける気持ちには陰りがないと思う。
「A、こっち来て」
『まだご飯作ってるだら?』
俺が豊橋の会社を退社し、YouTubeに絞って岡崎に戻ってから互いの家を行き来することが多くなった。今日はAが俺の所へ来てくれて一緒にいる。
小さな体でせっせと料理を作る。その手際の良さはプロも顔負けだ、と俺の中では思っている。
『どうしたの、突然』
後ろからハグをすると、不思議そうな声を上げる。
「ん? 付き合ってすぐのこと思い出してた」
『ああ、今日のざわくんのやつか』
あんなこともあったなあ、と苦笑いする彼女は今も少女のように無垢で明るい。あの頃を思い出すと、自分達がここまで続くなんて想像もできなかった。
1度別れて復縁して、なんてことがなく、脈々と付き合いを続けている。でも時間の流れは早い。あっという間に9年目も過ぎ去ろうとしている。
『本当はね、私達すぐに別れると思ってたよ。幼馴染だしモテるし、どうせ他の子に目移りするって』
思わぬ本音にたじろぐ。
『でも亮は本気だった』
鍋の火を止める。今日の夕飯は筑前煮に豚汁、ほうれん草の白和えやいくつかの付け合わせが小鉢に盛られて色を添える。料理を上手に作る所も昔から変わらない。
『全然目移りしんし、別れようドッキリの時は号泣してるし、風 俗も行かないし、愛されてるのかもってずっと自惚れてる』
前を見ているから見れないけれど、Aの顔は赤いはずだ。自分の顔も火照り始める。
「自惚れじゃないよ。大正解」
もちろん他の女の子に告白されたことはある。メンバーや大学の先輩、同級生にそういう店で1発やらないか、と誘われたことだってある。
でも俺の目にはいつだってAしか映らなかった。ドッキリとはいえ、別れたいなんて告げられた時は本気で泣いて落ち込んだ。ドッキリだとネタばらしされて安心して、また泣きそうになって。俺の人生はAでいっぱいだ。
「ねえA」
『ん?』
小恥ずかしそうに振り向く彼女に目線を合わせる。
「これからも俺はAの人生の中にいてもいい?」
『うん。私も亮の人生の中にいていい?』
「絶対いて?」
微笑み合い、俺達は唇を重ねた。
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あおやなぎ(プロフ) - AYN98036518さん» 初めまして、ありがとうございます! これからもこの作品をよろしくお願いします(^^) (2021年1月5日 15時) (レス) id: 098b1a6f9b (このIDを非表示/違反報告)
AYN98036518(プロフ) - 面白いです!面白すぎます!頑張って下さい!続き楽しみに待ってます!!!!!!! (2021年1月4日 12時) (レス) id: 12406a430a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年5月14日 22時