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小瀧が王子役に立候補した後、
対抗してくる猛者はおらずそのまま小瀧に決定。
次のベル役。小瀧が相手というだけあって誰も立候補しない。
ただ単にやりたくない人、女子に睨まれたくない人、
自分なんかが小瀧の相手役をするのは烏滸がましいという人。
前から視線をじーっと感じるが、絶対に重岡の背中から
目を逸らすもんか。
その重岡の壁がくるりと回転した。
｢Aさん、小瀧がやってほしそうやで｣
｢やらん｣
｢俺ガストンやったるやん｣
｢何の説得にもなってない｣
ええから前向いといて、と肩をぐいぐい押す。
『おらへん？じゃあ王子が選んでいい？』
は。おい絶対やめろよ。
いらんこと言うなて。
『じゃあお姫様は』
｢あの、おらんねやったら私やってもええかな…｣
小瀧の隣から上がった声。
クラスの…いや学年の天使がそっと手を挙げていた。
言いかけていた小瀧の声は消え、代わりに周囲が盛り上がる。
モカちゃんしかおらん！という声や
めっちゃ観客来るんちゃう！？という声だらけ。
恥ずかしそうに笑ってるモカちゃんは今までで1番可愛く見えた。
『ん、じゃあ次ガストン』
少しだけ声が低くなった小瀧が配役を決めていく。
さっきまでの元気がない。
…そんなにあたしがよかったか？モカちゃんより？
もう決まったことやしどうこうならんと思うけど
なんかごめんやん。元気出せよ小瀧。
役は全て決まり、次は裏方の要である脚本兼監督。
これが劇において最もめんどくさい仕事である。
当然誰も上げはしない。
『……Aさん、やってくれん？』
｢え｣
全員の視線があたしに向くのが分かった。
なんてこった。
姫をやらんから1番めんどくさいのをやらせようってか。
小瀧も意地悪や。
ここであたしが首振ったら、また沈黙の時が長引くよな。
｢…分かった｣
姫は逃れたものの、大変な役職についてしまった。
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作者名：カジャ
| 作成日時：2022年9月12日 21時
