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伝令として隼の表田さんが救護所に飛び込んできたのは鐘が打ち鳴らされてからすぐのことだった。
A「表田さん?」
表田「カノン砲だと思われていた積荷が臼砲と震天雷だった!消し止めるための水と桶急いでくれ!」
A「なっ?!」
慌てて桶やら水瓶やらを駆けてくる人たちに渡す。
水は最前線まで引いてあるからそこで汲める。
美弥「震天雷?」
A「カノン砲は鉄球を飛ばすだけなので砲弾が爆発するわけじゃありません。
ですが震天雷は中に火薬が詰められていて、着弾してから炸裂します。
爆発すれば、池の堤も吹き飛ばす代物です」
美弥「そんなに?!」
唯一の方法は着弾しても水をかけて消し止めるくらいだ。
失敗すれば死ぬ。
A「震天雷自体高度な技術で作られてますから高級品ですし、カノン砲のように何十発分もないはずですが………」
一発でも炸裂すれば、何十人も死ぬ。
A「そんなもの、城攻めくらいにしか使わないですよ、普通は……」
表田「臼砲は3つ、三発撃ったら砲撃は止む。
何発用意してきたかは分からないが、目視できただけでも6箱あった」
組頭「目眩がしてくるのぉ」
表田「組頭!」
組頭が奥の部屋から出してきたのは、銛だった。
数個の焙烙火矢が縄で繋がれている。
A「それは石製の、銛ですか?」
組頭「この導火線に火をつけ、臼砲の側へ投げろ。
月輪の若い衆ならできるじゃろ」
一本二貫(約7kg)はありそうな武器だ。
A「こんなもの、いくら頭上から投げたってとても森の臼砲までは届きませんよ」
いくらなんでも、と思ったのも束の間、柚太郎さんが顔を出した。
柚太郎「組頭」
組頭「おお、柚太郎。ちょうどいい、ベニテングタケにこれを投げ込んだれ」
柚太郎「は〜い」
ひょい、と放られた銛を柚太郎さんはなんなく片手で掴んだ。筋骨隆々という体型でもないのに。
数本を受け取ってそのまま崖の方へ駆けていくのを見て唖然とする。
組頭「風体は飄々とした優男じゃが柚太郎は月輪一の剛力の持ち主じゃ。
あの銛くらい、軽いもんじゃろ」
A「筋違えたり背中痛めないといいんですけど………」
表田「A、前線に移動できない負傷者もいる。来てくれ」
美弥「こっちは私達が何とかするから」
幸い怪我人はまだ来て居ない。
A「すみません、頼みます」
救急箱を持って崖へ向かうと、血の匂いと、火薬の匂い、熱された鉄の匂いが鼻をついた。
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みずけい - すごい…お上手ですね!絵も作品も設定も!とても面白いです。尊敬しちゃいます (1月6日 16時) (レス) @page26 id: 56c1fb1e39 (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 涙さん» ああ!!すみません変換完全にミスりました!ありがとうございます! (2019年10月13日 19時) (レス) id: 31c0208f5b (このIDを非表示/違反報告)
涙(プロフ) - 92話祝元になってますよ? (2019年10月13日 19時) (レス) id: 5e09944bd4 (このIDを非表示/違反報告)
彼は誰時 - 最近、組頭に沼ったのですが…ここが楽園か……最高です!まったり更新待ってます! (2019年10月13日 19時) (レス) id: fd426a3898 (このIDを非表示/違反報告)
乾 巽(プロフ) - 名無し65455号さん» ありがとうございます!ミスってました直しときますね! (2019年9月17日 15時) (レス) id: 14131fd91c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:乾 巽 | 作成日時:2019年8月17日 11時