ファミリーネーム ページ13
◇
カリカリカリ、とペン先が紙を走っていく音。
その音の持ち主はヴィルが持っている万年筆であり、真っ白な色紙には黒いインクで【Vil・Schoenheit】の文字が綴られていた。
ざっと100枚以上はあるだろうか。
高く積み上げられていく色紙をAは半分に分けると、丁寧に段ボールに詰め込んでいた。
『ヴィル、次の色紙置いておくね』
「ええ、ありがとう。悪いわね、手伝わせて」
『うぅん、ヴィルのお手伝いができて嬉しい』
「……本当、この学園にいるのが不思議なくらい良い子ね。じゃあA、次はこれをお願い」
『うん』
書き終わっている色紙をAに渡すとヴィルは次の色紙にペン先を走らせた。
受け取った色紙の1番上にある色紙を手に取ると、Aはインクの乾いた文字を指でなぞる。
指がなぞった場所には【Vil・Schoenheit】と綺麗な筆記体で書かれたヴィルの名前。
その美しい文字にAは口元に笑みを浮かべる。
「どこかおかしなところでもあった？」
『おかしなところなんてないよ。ただ……ヴィルのファミリーネームが素敵だな、って思って』
「ファミリーネーム？」
『うん。シェーンハイトって響きがヴィルにピッタリ』
「……それなら、これはどうかしら」
『？』
色紙を見て微笑むAにヴィルは何かを感じたようで、真っ白な色紙に再びインクを残していく。
カリカリカリ、と滑らかな手つきで書き上げると「はい」とAに色紙を渡した。
「特別よ。アンタにあげるわ」
『えっと、ありがとう？ えっ……』
「……ふふ」
Aが渡された色紙に目を向けるとそこには【A・シェーンハイト】と美しい文字で綴られていた。
『ヴィル、これ……』
「なに、不満？」
『そんなわけないよっ。A・シェーンハイト……ふふっ、嬉しいけど、なんだか照れちゃうね』
「アンタもいつかはシェーンハイトになるんだから、書き慣れておきなさい」
『っ……うん』
ヴィルの言葉の意味にAはほんのり頬を赤く染めて笑顔で頷く。
その可愛らしい笑顔にヴィルも口元に笑みを浮かべるのだった。
Aがその名を名乗る日がくるのは、そう遠くないのかもしれない。
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ミオ(プロフ) - ここさん» こちらこそ書いてくださってありがとうございます(*^^*) (2021年10月25日 15時) (
レス) id: 054e3ea455 (このIDを非表示/違反報告)
ここ(プロフ) - ミオさん» ミオさん、リクエストありがとうございます！デュースとの甘々のお話ですね、かしこまりました(*´꒳`*) (2021年10月25日 8時) (レス) id: e9ce79e520 (このIDを非表示/違反報告)
ミオ(プロフ) - とても素敵なお話ですね！リクエストをしたいのですが、デュースとの甘々を書いてもらうことは可能でしょうか？ (2021年10月24日 23時) (レス) id: 054e3ea455 (このIDを非表示/違反報告)
ここ(プロフ) - ぷかぷかさん» ぷかぷかさん、コメントに応援ありがとうございます^_^リクエストかしこまりました。幼児化した際は人魚と人間の姿、どちらがよろしいでしょうか？ (2021年10月24日 10時) (レス) id: e9ce79e520 (このIDを非表示/違反報告)
ぷかぷか - とても素敵な作品ですねこれからも頑張ってください。リクエストをしたいのですが夢主ちゃんが幼児化したオクタヴィネルをお世話するお話が見たいです。お願いできますか？ (2021年10月24日 4時) (レス) id: 905c688a73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ここ
| 作成日時：2021年7月30日 23時
