グリムラルカ インゴーストシップ

3.命懸けの権利取得ゲーム ページ8

"イベント開始前に…"


「ふざけるな!!!」



アナウンスを遮るように太い怒号が耳に飛び込んだ。囚われた乗客の誰かが出しているのだろう。鉄格子を叩きつける音がする。


それに参戦するように、別の檻から金切り声が聞こえた。



「全然意味わかんないんだけど！？さっさとこの船から出してくれませんこと！？」



耳を劈くようなきぃきぃ声は攻撃的で、今にも噛みつきそうな勢いを持っていた。


彼等の会話を先陣とし、次々と乗客達の不満と反抗の声があがる。



アナウンスの男は黙ったまま、何も言わない。乗客の声は少しずつ苛立ちを増していき、金持ち特有の優雅な言葉遣いも、どんどん汚くなっていった。



「言えないっての？何か…」


"少し黙って貰えます？"



丁寧に、でもドスの効いた一言が私達に突き刺さった。関西弁のイントネーションを混ぜたその声に船内はしんと静まり返る。



"人が説明しようとしてる時に、変な茶々入れんといてくれます？そもそも僕等に捕まってる身やし。

僕は置いとくとして、他の皆が何するか分かりませんよ？"



私達を黙らせるのには、それで十分だった。
辺りはすっかり静まっていて、音沙汰1つない。

満足したのか、男はフゥと一息ついて、話し始めた。



"まずは自己紹介でもするとしますかぁ
僕たちは魔物(ゴースト)、まぁオバケでも怪物でも好きに呼んで下さい

君等を捕まえた理由はカンタン。君等人間を、僕達が食べる(・・・)為です"



ご、ごーすと？、、人間を食べ、る？



当たり前かの様に次々と出てくる言葉の意味が理解できなくて、私はあんぐりと口を開けてしまった

お構いなし、と男のファンタジー満載の話は続く



"魔界って色々厳しいんですよ
ハロウィンしか人間を食べちゃだめーとか
魔王が食ったらハロウィン終了、とか"



現実から吹っ飛びすぎる話で、信じられない
魔界から来た魔物？私達を食べる？魔王？



(目で見てる訳じゃないのに、どう信じろと…？)



さっぱり分からない話に脳が考える事を拒絶し始めた。代わりに先程の恐怖が体を蝕んでいく



"でも、君等にとってタダで食われるのは本望じゃないと思いますし、それは僕等にとっても面白みもなんもあらへん。だから……"




僕達と『ゲーム』をしませんか?




そのゲームが私の人生を大きく狂わせる事になるなんて、この時私は想像もしていなかった。

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