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ドアの前で鞄の奥底に潜ってしまっていた鍵を取り出す。
同時にスマホが目に入った。
そういえば…と、元太くんにお礼を言っていなかった事を思い出した。
卒業する少し前に連絡先を変えて、
サークルにも顔を出す事は無くなっていた為、元太くんを含めたサークルの人達はほとんど私の連絡先を知らない。
家族、親しい友人、就職してから増えた連絡先。
合わせて20人いないくらいの縦に並んだ名前。
部屋に入り、スマホ片手に少しだけソファに腰掛ける。
電話帳にあった番号で検索するとすぐに出てきた"元太"の文字。
まだ何も履歴が無いトーク画面
"AAです"
"バイトお疲れさま"
"今日はありがとう、ごちそうさま。"
それだけ送り、スマホはそのまま伏せてお風呂場へと向かった。
.
シャワーを済ませ、髪を乾かそうと鏡の前に立って重要な事に気付いた。
すっぴんのままって大丈夫なのかな…
いや、大丈夫じゃないよね！？
なんて鏡の前で自問自答。
するとリビングの方から聞こえた通知音。
頭にタオルを被った状態で確認しに行くと
通知音の正体の"まだ？"という海斗くんからの急かすメッセージと、
20分程前に元太くんからのメッセージ。
"A先輩だー！"
"あれ作ったのも俺なんですよ！褒めて下さい！笑"
その2つのメッセージと共に［げんた］という名札を付けた犬のスタンプ。
その犬は見れば見る程、元太くんに見えてきてしまって。
一人静かな部屋で思わず笑ってしまった。
"よく出来ました"そんな言葉と花丸の絵文字を付けて送った。
そのメッセージにはすぐ既読が付き、すぐに返信がきた。
"先輩！日曜空いてますか？空いてますよね！？"
"早速ですが、遊びに行きませんか？"
日曜は特に予定無かったと思うし、大丈夫かな。
一応カレンダーを見ながら予定を確認し、すぐに承諾の言葉を返した。
"やった！楽しみにしてます！"
返信を確認する前に、海斗くんからの着信。
『も、もしもし、…』
宮近「[何だ、ちゃんと起きてたんだ
既読付かないから寝てるのかと思った…
まだ掛かりそう？]」
『あ、まだ髪乾かしてなくて……』
宮近「[そのままおいでよ、俺の部屋にもドライヤーくらいあるし笑
待ちくたびれたから、早くね]」
そう言って私の返事を待たず通話は切れた。
結局すっぴん問題は解決しないまま、眼鏡を手に取り海斗くんの部屋へと向かった。
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作者名：れおな | 作成日時：2020年12月10日 6時
