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疲れが溜まってたせいか、今日はいつもよりも酔いが回ってしまったみたい。
そんな私を心配した宮近くんが部屋まで送ってくれた。
結局まともにお礼も出来てないし、同じマンションとはいえ迷惑を掛けた。
ほんの気持ち程度のお礼にしかならないけど、
コーヒーでも、なんてお誘いした。
一瞬驚いた表情の宮近くんと目が合い、すぐに逸らされた。
そして、遠慮がちに"いいの?"って。
むしろこんな事しか出来ないのが心苦しいけど…
咄嗟に誘ってしまったけど、部屋散らかってないよね!?
たまに朝が慌ただしくなる事もあって不安だったけど、そういえば今日は大丈夫だった事を思い出した。
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コーヒーを用意してる間、宮近くんはずっと立ったままキョロキョロしてた。
あんまり見られたら恥ずかしいんだけど……
大して珍しい物がある訳でも、
インテリアに凝ってる訳でもない。
よくある平凡な部屋だと思う。
小さな机にコーヒーを置いて座ると、
宮近くんもその場で腰を下ろした。
20センチ程離れた距離は意外と近くて、ちょっとだけびっくりした。
宮近くんは何ともないといった表情でコーヒーの入ったマグカップを手にしていた。
ドキドキしてるのは私だけ?
煩く鳴る心臓。
その音が聞こえちゃうんじゃないかと思って。
目の前にあったテレビのリモコンを手にした。
『……あ、テレビ!宮近くんテレビ見ま「海斗、」…えっ?』
リモコンの電源ボタンを押す前に遮られた言葉。
宮近「海斗、って呼んでほしい……
…俺もAって呼んでいい?」
横を向くと、大きな宮近くんの目はしっかり私の目を見据えていた。
そのまま静かに私の言葉を待つ。
名前を呼ぶだけなのに。すごく緊張する。
『……か、かい、と……くん、?』
宮近「うん、なにA?」
名前を呼ばれた瞬間、大きく跳ねた心臓。
目を逸らそうにも何故か逸らせなくて。
その後胸がぎゅーって掴まれたような感覚。
宮近「…ははっ、何か照れるね笑」
先に逸らされた視線。
横に居る海斗くんの耳は少し赤く染まって見えた。
宮近「…Aって名前…良いよね」
『…海斗くんの名前も、良い…と思います、』
宮近「…なぁ、敬語もそろそろ止めない?」
『え、私敬語だった?』
宮近「敬語とタメ口が混ざったような…ほぼ敬語」
『気を付ける』
今日は海斗くんとの距離がぐっと近くなった気がする。
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作者名:れおな | 作成日時:2020年12月10日 6時