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うみくんに晩ご飯をご馳走になり、
まだそんなに遅い時間でもないのに家まで送ってくれると言う。
まだ遅くないし大丈夫だよ、と言うと。
俺がまだ一緒に居たいから、って。
面と向かってそんな事言われたらやっぱり恥ずかしくて。
うみくんを見る事が出来なくて、足元を見ながら隣を歩いた。
中村「下向いてたら危ないよ?」
その言葉と共に腕を引っ張られ、うみくんの胸に引き寄せられた。
『…っ!?』
驚き過ぎて思うように声が出なくて。
顔を上げると前から車が来ていて。
『ご、ごめん!ありがと、』
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『…うみくん?もう、大丈夫…だよ?』
だけど、うみくんが離れる気配は全然無くて。
未だにうみくんの腕の中に収まっている。
少しだけ駅から離れた道。
今はあまり人通りは無くて。
そのまましばらくお互い無言の時間が流れた。
中村「……あのさ、このまま聞いて?」
その沈黙を破ったのは頭の上から聞こえたうみくんの声。
中村「まだ全然言うつもり無かったんだけど、
……俺、Aちゃんの事が好き」
真剣な表情で言葉を発するうみくん。
え、どういう事……
好きって、あの異性に対する好き?
友だちとかそういうのじゃなくて?
この状況からしてそんな当たり前の様な事が脳内でぐるぐるする。
中村「知り会ったばっかりなのに、って思うかもしれないけど。
初めてAちゃんの笑った顔を見た時、あーいいな、って。
ずっと近くで、……ううん、隣で見てたいって思った」
そこまで言い終わると、うみくんから身体は離れた。
中村「今すぐ、とかそんな事は全然思ってない。
Aちゃんは仕事頑張りたいって言ってたしね
…だけど、ほんの少しだけで良いから、意識してくれたら俺は嬉しい」
最後は、"俺、追いかける恋好きなんだ"っていつもの笑顔を見せてくれた。
それから家までの道はさっきの出来事が夢だったかのように、私の知ってる明るいうみくんだった。
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作者名:れおな | 作成日時:2020年12月10日 6時