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教会を見回しても、兄の姿はなかった。
正面の扉からは出ていっていないはずだから、裏口から出たのだろう。
『先に行ってて、すぐ戻るから』
「Aちゃん?」
体に鞭を打って裏口を出ると、少し先に兄の姿が見えた。
『、お兄ちゃん!』
止まってくれた人影に、慌てて駆け寄る。
『お兄ちゃん、…ごめんなさい。勝手に家を出て、ずっと連絡無視してごめんなさい』
「A、」
『もう徳川くんへの復讐なんかやめて、また一緒に暮らそう?』
「…俺はあいつを許さない。お前はなぜ自分の父親を殺した相手に平然とした態度でいられるんだ?」
『それは、』
「お前の記憶に親父はいないもんな。…お前と分かり合うことはできない。お前が望むなら、あいつらと楽しく生きればいい。ただ、もう俺たちは、兄妹には戻れない」
『お兄ちゃん、』
「熱が出てるのに無理させて悪かった。じゃあな」
『待ってお兄ちゃん、行かないで!お兄ちゃん!』
兄は私に背を向けて歩き始めた。
私はというと、熱のせいで体に力が入らず、兄を追いかけたい気持ちと裏腹にペタンと座り込んでしまう。
『お兄ちゃん!置いていかないで!待って!一人にしないで…』
「A!!」
遠くから、信長の声が聞こえたような気がした。
落ち葉を踏む音がした後、ぎゅっと温かい温もりに包まれた。
「A、?」
『信長…』
体の辛さと漸く信長に会えた安心感、兄との別れの悲しみから感情はぐちゃぐちゃだった。
いつの間にか涙が溢れていたようで、親指で優しく目尻を拭われる。
「ひどい熱だ。帰ろう」
何も聞かずにいてくれる信長の優しさが、温かく、そして辛くもあった。
信長が自分のマントを脱いで私に着せる。
そのまましゃがんで背を向けた。
『自分であるく、』
「いいから、乗れ」
無言の圧に負けて、おずおずと背中に体重を乗せる。
信長は華奢で無駄な肉が一切ないと思っていたけど、意外にもちゃんと筋肉が付いていることを知った。
首に手を回して顔を埋めると、どこか懐かしい匂いがした。
教会に戻ると、みやちゃんたちが待っていてくれた。
同時に、ペリーさんとジャージの生徒も目に入った。
「Aちゃん!?」
みやちゃんが駆け寄ってきてくれる。
「見事な策だ」
そこに、ペリーさんも拍手をしながらやってきた。
「だが、次は負けないぞ?」
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美優(プロフ) - 有紀さん» 初めまして!コメントありがとうございます☺️私も最近続きを書きたい欲が出てきました!気長にお待ちいただければ嬉しいです! (4月14日 14時) (レス) @page31 id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
有紀(プロフ) - 初めまして、このドラマが好きで読ませていただきました。続き楽しみにしてます。 (3月29日 18時) (レス) id: 1322499c70 (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - ななさん» お久しぶりです!嬉しいです✨ (3月22日 15時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
なな - TVerで配信開始されたので懐かしくなりまた読みにきちゃいました。 (3月6日 23時) (レス) id: 114e35bcaa (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - らんさん» ありがとうございます!最近は更新できていませんが、読んでくださる方がいると思うと嬉しいです😊 (2023年4月15日 18時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆう | 作成日時:2022年8月30日 10時