． ページ32
「Aちゃん！？」
黙って見ているだけでは耐えられなくなった私は、みやちゃんに断りを入れて走った。
この辺はもう物騒な人たちいないし、きっとみやちゃんも大丈夫だ。
手始めに、近くにあった理科室に入ると、偶然にも信長たちがいた。
華麗に攻撃を避け、敵を蹴散らしていく信長。
その背後に、鉄の棒を持った今川くんが迫っていく。
武器を使うなんて卑怯すぎるよ…。
『信長！』
と、私の真横を黒い人影が駆け抜けていった。
程なくして、鈍い音がする。
『黒田くん！？』
信長の代わりに攻撃を受けたのは、黒田くんだった。
「うあぁっ！」
もう一度信長に棒を振り翳した今川くんを、黒田くんが全身で取り押さえている。
「黒田、弱ぇ奴はすっこんでやがれ！」
「前の俺ならそうしていたが、何故だか、今はそれができぬ！！！」
「おい見苦しいぞ黒田！」
『おおっ、』
ずっといたのだろうか。
壁際で一連の出来事を見物していたらしい竹中くんが声を発した。
「我ながら馬鹿げたことをしていると思う。だがそれで、大いに結構！信長、お前も大馬鹿者だ！！…だが、よき器だ」
「…うつけが」
『黒田くん…』
黒田くんは、信長に心を動かされたんだね。
人を信じる信長が、黒田くんを変えた。
《残り、1分》
『みんな急いで！……ああ、もう！』
時間が足りない。
倒しても倒しても現れるジャージ姿の生徒たち。
私も、近づいてきた生徒に蹴りを入れたりして援護した。
『っ！』
油断した。
背後からきた生徒に気がつかなくて、そのまま地面に倒れ込む。
「へへっ、お前女のくせに喧嘩か？」
「よく見ると可愛い顔してんじゃねえか」
「放課後、俺たちと気持ちいいことしてくれるって言うなら、今は見逃してやってもいいぞ？」
『寒っ、そんなことするわけないでしょ、』
両側から羽交締めにされ、正面の男子生徒がニヤニヤしながら向かってくる。
反撃しようと拳を握ったところで気がついた。
そういえば今朝、指挟んだな私…。
アドレナリンが出ていて痛みを感じていなかったけど、実はちゃんと怪我していたらしい。
指一本の力が入らないだけでこうも力が出ないものか。
口では強がりを言ったけど、実質的にもう終わりだ、と目を瞑った。
「A！」
遠くから信長の声が聞こえたかと思うと、すぐに腕が解放された。
代わりに、暖かい腕に包まれる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 613人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
美優(プロフ) - Ａ？さん» コメントありがとうございます！前田くんと絡めるように頑張ります！ (2022年8月26日 10時) (
レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
Ａ？ - 凄く面白いです前田との絡みが欲しいです (2022年8月25日 15時) (レス) @page35 id: 463b37ca19 (このIDを非表示/違反報告)
涼杜兄妹(プロフ) - いつも楽しく拝読しております！秀吉ともっと絡ませてほしいです！！！ (2022年8月25日 14時) (レス) @page35 id: a89c13a921 (このIDを非表示/違反報告)
美優(プロフ) - すずさん» ありがとうございます！ (2022年8月23日 19時) (レス) id: c086026ca6 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 応援してます!! (2022年8月19日 18時) (レス) @page13 id: c8c40d0f19 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆう | 作成日時：2022年8月10日 0時
