episode15 ページ15
私の隣には、廉兄ではなく何故か小瀧さんが座っている。
キッと鋭い目で睨み付けるも、にこっと笑い返されてしまった。
廉兄の隣には紫耀くんが座っていて、いつの間にか二人は仲良くなっていた。
私と小瀧さんの存在を忘れたかのように、二人だけで楽しそうにお喋りをしていた。
意識しなくとも自分の表情は暗くなっていく。
それに気付いた小瀧さんが“そんな怒ったら可愛い顔台無しやで”と耳打ちをして来た。
無理矢理私の隣に座ってきたのは小瀧さんなのに、何故そんなことを言われなければいけないんだろう。
厨房の奥から、可愛らしい店員さんが四人分の料理を運んで出てきた。
営業スマイルを絶やさず、ごゆっくりどうぞ、と言い残し厨房に戻っていった。
気分を変えようと、目の前のクリームパスタを一口頬張る。
麺のもちもちとした食感と、クリームの甘さが口内に広がる。
ふと顔を見上げると、紫耀くんが私のクリームパスタをじっと見つめていた。
「……紫耀くん、一口食べる？」
「えっ？！もらってもええの？！」
「まぁ……一口やったら、別に構わんよ」
はい、とクリームパスタを紫耀くんの前に差し出してあげれば、途端に笑顔になる。
少し大きめの一口を食べたあと、顔を緩ませながらぐっと親指を立てていた。
クリームパスタを返してもらい、また一口食べたときに気がついた。
これが世に言う、間接キスではないかと。
理解したときには顔に熱が集中し、体温が上がっていくのを感じた。
チラッと廉兄の様子をうかがうも、平気そうな顔でスマホを弄っている。
まぁ、廉兄にとって、私が誰とどんなことをしようがどうだっていいんだろう。
自虐的なことを考えてしまい、気分はどんどん沈んでいく。
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作者名：も。 | 作成日時：2019年9月20日 0時
