【忍たま】忘れたくない人2

距離を ページ24

私は部屋に戻り、体育座りの体制で壁にもたれかかっていた


今は授業中なので自然と周りも静かになり、鳥の鳴き声ぐらいしか聞こえなくなっていた


それだけ静かになると私はぼーっと何かを考えることが多い



本当にただぼんやりと考えるだけだ



(八左ヱ門、)


私は先程の八左ヱ門との会話を思いだしていた


いつもと変わらず眩しい笑顔だった


けど私はその笑顔にうまく答えられるような笑顔ができていただろうか


正直言うと分からなかった


ぶっちゃけ私はさっき自分が上手く笑えていたのかということより、八左ヱ門に対しての気持ちの揺れが少なからず起きていることが気がかりだった



(私はここの世界の人じゃない)



いつかは元の世界に帰らなくちゃいけない


その現実が重たく私にのしかかってくるようだった






当たり前だが、この時代で生きたことのなかった私は一日一日がとても新鮮だった、非現実的だった


そこで好きな人もできて夢のようだった


けど今その好きな人が私を少なからず苦しめていることは確かだった


怖かった


いつ来るか分からない別れの時が来るのが



だから私は思った



これ以上彼への思いを募らせないよう、距離を少しずつ置き、他人のような状態に戻るのがいいのではないかと



これが正しいのかなんて10数年しか生きてない私には判断できなかった


けど少しでも私の心のダメージを減らすために、自分を守るために、やるしかない



「っは、ほんと最低だな私」


こうするのは全部自分のため


八左ヱ門との別れのショックを少しでも減らすため



けどいつ来るか分からない別れのためにこんなことをするのはとても心が傷んだ



「っ、」



私は下を向いた


そして涙が1粒床へ落ちた

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