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シガレット・キス 3 (ラスト) ページ7

「私、蓮のタバコのにおい、嫌いじゃないよ。」


もともとタバコのにおいはそんなに好きじゃないけれど。
好きな相手がまとっているからなのか、最大限においがつかない努力をしてくれているからなのか。

仄かなその香りは、決して不快ではなく、城山…いや、蓮が大人なのだと実感させる、香水のようにすら思えてくる。


私の言葉に、眼鏡の奥で目を丸くする蓮。


「だからタバコの味もどんなかなーって。
 …吸う気は一切ないけどね。」




蓮が大人だと実感するのと同時に、自分がまだまだ子どもなのだと思い知らされる。

いつか、私から離れて行ってしまうのではないだろうか。


はやく大人の世界を知って、蓮と並びたい。



そんな思いから、ついあんな質問をしてしまったのだ。




「まぁ、私はこのお菓子がおいしいから、知らなくてもいいや。
 はやくもう1本ちょうだい。」


追い付くなんて、夢のまた夢。
そう思いながら新しい1本をねだると、また口内に差し込まれる。

ぽき、と音を立てて食べようとしたその時。





「⁉⁉」



腕を強くつかまれ、立たされる。

そのまま身体を強くひかれた。



混乱する中で唯一分かったのは、腕を掴む熱い手と

唇の柔らかい感触。



状況を把握しきる前に、ぽき、と軽い音が鳴って蓮は私から離れた。



口に私が咥えていたスティックの半分以上を携えながら。




「そのままのAがいいんだから、急いで大人になるんじゃねーの。」


ぽきぽき、と音を立てながら蓮に食べられていくスティック。

私はつられて残りを口にし、食べ終わった後で状況を把握した。


「…え、い、いまのって、え…」


「で、間接的だけどタバコの味したか?」



「わ、わかんなかった…」


「もう一回試すか?」



実際に吸わない限り、タバコの味なんてわかるわけない。
こんな方法じゃタバコの味なんて一生分からないだろう。


でも。




「…うん。」




私にはしばらく、この甘いお菓子がちょうどいい。
そう思いながら、最後の1本を口に咥えた。

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設定タグ:オリジナル , 恋愛 , 短編   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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トトトノト - すごい良い!めっちゃ好きですわ〜。続きを見たいです。あっ、勿論自分のペースでええけど...。 (2020年7月1日 22時) (レス) id: 200aff7742 (このIDを非表示/違反報告)
瀬令瑠菜(プロフ) - 水渚桃華さん» ありがとうございます!イベント内の作品やイベ主様の作品もこれから拝見しますね! (2020年5月24日 16時) (レス) id: 82a09a5d81 (このIDを非表示/違反報告)
水渚桃華 - 読ませていただきました。面白かったです。私が気に入った話は、生徒会長×後輩役員の話です。カッコ良い会長にときめいてしまいました!これからも見にきますので、更新頑張ってください。イベント参加有難うございます。 (2020年5月24日 15時) (レス) id: 3a85905bbd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:瀬令瑠菜 | 作成日時:2020年5月23日 23時

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